漆
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く、つかず離れず、これまでのマタ・ハリが腕を組んでいた時と比べれば距離が開いた、しかし心的距離は縮まった二人が、そのまま道を行く。
既に日は沈んでいる。後はこのまま駅に向かい電車に乗って帰るだけなのだが、酷く遠いわけではないために、二人は歩いて帰るという選択肢を取った。
深い理由はない。ただ、まだ今日という日を終えたくなかっただけ。ギリギリまでその余韻に浸るために、なにか語らうわけでもなく、ただ歩いていた。
既に、語ることは終えた。一緒にいるだけで最大に幸福というわけではなく、しかし無言が苦しくないような、そんな心地の良い距離感。そろって抱くのは、明日以降への羨望。
男は、一日家でのんびりして、またどこかへ行こうと考える。
女は、生前得られなかった全てに感謝し、希望を抱いている。
さあ、次はどこに行こうか。体を動かしたいならボウリングとか?と。そう伝えようとしたところで……しかし、運命はそれを許さなかった。
忘れてはならない。これは、日常ではない。
忘れてはならない。ここに、平和などない。
忘れてはならない。相手は、こちらの都合など考慮しない。
忘れてはならない。運命は、希望の欠片をこそ蹂躙する。
忘れてはならない。これは、ここは―――――――
「よう、お二人さん。サーヴァントとマスターであってるよな?」
今、行われているのは。人間と英霊の欲望が入り混じる、聖杯戦争なのだと。
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