第二十三話 アドバイザー
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れないが。
実は先ほど、ルリがダダをこねてアスナに泣きつきはじめた時のこと。
アスナだけでなく、キリトもまた呆れた面持ちで彼女が収まるのを待っていたのだが、
「ーーーーッッ!」
考えれば、アスナがちょうど目を伏せた瞬間だと思われる。
その刹那のタイミングで、キリトの顔面スレスレを刃物が横切っていったのだ。
より正確に言えば、飛んできた刃物をキリトがギリギリで避けたというところが正しい。
しかも、キリトは全力で避けたのだ。
ーーここが《圏内》だということも忘れて。
そして眼にしたのは、飛んできたであろうーーいや、“飛ばしたであろう”本人からの静かなる微笑みだった。
一瞬何かの見間違いかと思ったが、それを確かめる前に彼女はアスナに泣きつく表情に戻っていた。
キリトが自分の目を疑ったのもムリはない。
刃物が飛んでくる前に肌で感じ取ったのだ。
ーー『オマエヲ、コロス』
第六感ともいうべき殺気を感じ取る能力。
現実世界どころか、デジタルのみで形取られた仮想世界では存在することはないはずのシロモノ。
それでも幾たびの死線をかいくぐってきた《攻略組》だからこそ理解し、把握できる確かな危機感。
あんなに明確な殺気を放ったにも関わらず、目の前にいるーーましてや密着さえしているアスナにさえ気どられることを許さなかった。
あれは本当に、“キリトだけ”に送った視線だったのだ。
こんな芸当ができる人物が、こんな下層にいるはずがない。むしろいていいはずがないのだ。
あれは確実に、《上》にいたプレイヤーだ。
「あなた、本当に気づいてないの?」
そんな思考を遮り、アスナは意趣返しのように呆れた声で問うた。
「えっ?」
当然、キリトはなんのことだかわかっていない。その反応が来ることがわかっていたアスナは、ためらいながら秘密を口にした。
「………あまり言わない方がいい話だから、オフレコで頼みたいんだけど……」
「OK。それで?」
「……ルリさん、元はウチの人なのよ」
「………ウチ?………えっ、てことは、まさか!」
「そう、《血盟騎士団》の元団員。それも幹部役員で、実力で言えば団長と私の次、No.3に数えられてた人よ」
衝撃の事実だった。
確かにあの実力で《攻略組》にいないのはおかしいと思うレベルだったのだ。
なぜなら、彼女は《攻略組》でもトップレベルのアスナをして、彼女から離れる際に「なんとかしなければならない」ほどの力を込めなければ振りほどけなかった相手なのだから。
コレならあの曲芸じみた技にもうなずける。
「呆れた、ほんとに気づいてなかったみたいね。ルリさんだって見たことあるって言ってたじゃない。顔合わせだってしたこ
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