第二十三話 アドバイザー
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ね?と問いかけてくる目線から、キリトは苦笑しつつほんの少し顔を逸らした。
悪名はやはり消えることなく悪名のままで。
《ビーター》の名は未だプレイヤーたちに染み渡っている。
たとえ小さなシミであろうと、気にくわないものであれば叩くのが人間の悪性だ。
ただの嫉妬だけならまだしも、正当な理由を得た彼らがその手を止めるわけもなく。
わかりやすいはけ口となった《ビーター》は悪評を買いやすい名となってしまった。
それらをしっかりと理解しているキリトは居心地の悪いことになったな、と思ったのだが……
「アスナちゃんと仲がいいことはよく聞くわ〜。この前なんて、一緒にお昼寝してたんですって?」
「ちょっと待ってそれどこ情報ですか!?」
「ファンクラブーーコホン、ちょっとした風のうわさで聞いたのよ」
「ほんとに風のうわさなんですよねそうですよね!?」
「うふふ。さあ、どうでしょう?」
口元を手で隠しながら愉快そうに声を揺らす。
はぐらかしたルリの不穏な言葉に己の危機を感じつつも、キリトは心のかたすみで少しホッとした感情を浮かべていた。
慣れたつもりでいても、見知らぬ他人から罵詈雑言を浴びせられるのはなかなか精神的にくるものがある。
大人びて見えても、未だ思春期を過ごす子どもなのだ。
「ところで、今日はここへなにをしに来たの?」
話が切り替わったことと、ようやく本題へ移れるということに若干の安堵を得たキリトだったが、
「ええっと、事件のことについてルリさんの意見を聞きにきたんですけど…」
「事件?何かあったの?」
ちょこん、と首をかしげるルリ。
同じくキリトの頭上にもはてなマークが浮かんでいた。
話が噛み合わないことに不可解な顔を交しあう。しかし互いの顔を見合っていても答えが出るわけもなく、自然ともう一人の方へと視線が流れた。
キリトのどういうことだ? という視線にアスナが申し訳なさそうに目を逸らしつつ答えた。
「……ルリさんにアポ取ろうと思ったら、二つ返事で了承されて……詳しい事情を説明できなかったのよ」
「だって、アスナから『会いに来たい』ってメッセージが送られてくるなんて思いもしなくて……」
照れ笑い、というのか。はにかんだ笑顔を見せるルリ。
それだけ見ていればなんとも初々しい反応だが、反対側で呆れたようにため息をついているアスナを見ると、同情を禁じ得ない。
彼女らの関係性がどういうものか、深くはわからないが、アスナが歯切れの悪い態度を取っていた理由はなんとなく理解した。
(苦手なんだな…)
キリトはそう思いながら、ハハ、と乾いた笑い声をもらした。
「う〜ん、なるほど。そういうことが起きていたのね」
自ら
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