第二十三話 アドバイザー
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戻しなんとか脱出。力尽きたというわけである。
その彼女の目には生気というものを感じられない。まるで死んだ魚の目のようだ。
そんな彼女を前に、キリトはどうすればいいかわからずオロオロしていた。
あの《攻略の鬼》が、《閃光》と呼ばれた《血盟騎士団》の副団長ともあろうお方がここまで憔悴するところなど、想像すらできなかったのだ。
そしてアスナが消沈する原因となった人といえば、
「ごめんなさいね。久しぶりに会うってなったら抑えが効かなくなってしまって……」
てへっ、と本人の雰囲気に似合わないお茶目な仕草をしながらお盆にのせたお茶とお茶請けをキリトとアスナの前にさしだしていた。
「ありがとうございます、ええと……、」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。私はルリ。
アスナのお姉さんです」
「へっ!?」
「違いますからっ!わたしに姉はいません!」
突然のカミングアウトに、キリトがすっとんきょうな声を上げるのとアスナが思い切り立ち上がって声を荒げたのはほぼ同時だった。
「え〜?ダメ?」
「上目遣いしてもダメです!」
一名を置き去りに、二人して(なお片方のみ)ギャーギャーと騒いでいる。
ぽか〜んと口を開けて呆然となっていたキリトだが、それも仕方のないことだった。
リアルのことを詮索しないのがネトゲのマナーというもの。だというのに、いきなりの肉親宣言だ。頭が驚愕に染められるのもムリはない。
ーーまあ、二人の話を聞く限り、ルリの一方的な姉妹宣言のようだが。
四、五分してーーその間キリトは出された茶をすすっていた。懐かしい上に思いの外美味しかったーー話がまとまったのかルリがキリトに向き直った。
「改めまして、私はルリ。この《瑠璃茶屋》の経営者兼料理人です。
よろしくね、《黒の剣士》さん」
再度自己紹介を受けたが、ルリは少し不服そうだ。キリトに自己紹介することではなく、アスナの姉と名乗れないことがだ。
先の様子を見る限り、アスナの方が姉に近いと言わざるをえないが。
彼女は桃色を基調とした着物に水色の前掛けをした、和風な女性だった。
長い髪は後ろでまとめられている。お辞儀をした際に垂れてきた前髪を耳にかける仕草は優美な大人の女性といった印象を強く受けた。
全体的におしとやかという言葉が似合う格好なのだが、あの暴挙を見た後では姿そのままのイメージを素直に受け入れることはできなかった。
「っ……おれのこと知ってたんですか」
ただでさえ年上を意識してしまう見た目と破天荒すぎる行動をするルリ。それにたいする動揺に加えて、こっぱずかしい二つなで呼ばれたキリトは珍しく敬語になっていた。
「何度か見たことがあるの。それにあなた、有名人でしょう?色々な意味で」
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