ペルソナ3
1779話
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月光館学園の校舎から出てきたゆかりだったが、校門前で待っている俺を見ると目を大きく見開く。
既に午後5時近くであり、2月という事もあって夕日は完全に沈み、夜空と呼ぶのに相応しい空になっている。
それでもゆかりが俺の姿をしっかりと見る事が出来たのは、校門前に街灯があったからだろう。
「よう、遅かったな、ゆかり」
「ちょっ! ちょちょちょ! 何であんたがこんな場所にいるのよ! 今日はこっちから電話するって言ったでしょ!」
周囲にいる部活仲間達からどんな視線で見られているのかにも気が付かず、ゆかりは大きな声で叫ぶ。
「そう言ってもな。ちょっと暇だったし……」
そこで一旦言葉を切り、数秒の意味ありげな沈黙の後で再び口を開く。
「なるべく早くゆかりに会いたいと思ったからな」
『きゃーっ!』
「ちょ、いきなり何言ってるのよ! 馬鹿じゃない? てか馬鹿!」
いつもの2度繰り返すゆかりの言葉とは少し違う叫び。
何だかんだと、今のゆかりはかなり混乱しているのだろう。
まぁ、分からないでもない。
まさか昨日の今日で、再び俺が学校前にやってくるとは思わなかったのだろう。
「ちょっと暇だったんだよ。一緒に家電とか家具とかを選んでくれるんだろ?」
そう告げた瞬間、ゆかりの周囲にいた友人達の表情が驚きに染まる。
「ね、ねぇ。ゆかり。もしかしてあんた、寮を出て同棲を……」
「違うわよ! もうっ、ほら! アクセルさっさと行くわよ!」
ゆかりにとっては、ここで俺にこれ以上妙な事を言われないようにと思っての行動だったのだろうが……この状況で慌てたりすれば、それは余計に他の連中の疑惑を深めるだけだと思うんだが。
実際、他の連中はゆかりに驚愕の視線を向けていたが。
……その上、少し遅れて出てきた男の弓道部員達も、ゆかりに向かって驚愕の視線を向けている者がいる。
もっとも、中には本気で俺に鋭い視線を向けているような奴もいるのだが。
そういうのは、恐らく本気でゆかりに対して恋心を抱いている奴だろう。
「ほら、行くわよ!」
「お幸せにねー!」
「違うって言ってるでしょ!?」
俺の手を握って引っ張るゆかりが、背後から聞こえてくる友人の声に、そう叫ぶ。
幸い……と俺が言うのもどうかと思うが、もう5時近くで暗くなっている事もあって、周囲に弓道部員以外の姿はない。
こうして手を繋いでいる――正確には引っ張られているのだが――ところを誰かに見られる心配もないだろう。
そんな風に他の連中を置いて月光館学園から離れると、ようやくゆかりは手を離す。
その後、鋭い視線を……それこそ、影に狙いを付けているかの如き視線をこちらに向けてくる。
「それで、本当に何しに来たのよ
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