ぬらりひょん
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だよ。あの未来視が持ち込む厄介事とか!そっちの運搬屋に憑いたクドい武士とか!」
「はぁ!?何だそれ俺に何が憑いてるって!?」
「変態センセイの件とか!…全部に警戒していたら神経が参ってしまうねぇ…」
―――おい、鴫崎は知らない状態なのかよ。もう少しは話してると思ってたよ。鴫崎、愕然としてんじゃねぇか。
「今だってこう見えて、新たな問題が生じていてな」
「おいスルーすんな!俺に何が憑いてるんだよ!!あと何だよ変態センセイって興味深ぇな!!」
奉の肩を八つ手のようにでかい掌でガッシと掴んだ。…相変わらず声も図体もでかい。
「あら、ふふふ…時間指定のお荷物、大丈夫なの?」
エマさんが腰をかがめて鴫崎を覗き込む。黒のニットがはちきれんばかりの谷間が俺と、鴫崎の眼前に張り出してきた。うっわ何これどういうこと!?ちょっとこれ大丈夫なやつ!?この後お金取られるやつ!?
「うっ…あ、そうだそうだ、のんびりしてる場合じゃねぇや」
鴫崎は鼻の下は伸ばしっ放しながらも残った餅を口に放り込み、制帽を被り直して立ち上がった。
「あははは青島、お前すげぇ顔になってんぞ?」
お前もだろうが。
「うるせぇよ。早く帰れ」
―――驚くべきことに、鴫崎は玄関を出るまでずっと笑い続けていた。
「―――嵐が来て去ったようだったな」
誰に云うでもなく、呟いた。
エマさんがくすくす笑いながら、鴫崎がとっ散らかしていった箸や皿をまとめて下げてくれた。こういうの本当にびっくりするんだが、あいつも奉も基本的に食い荒らして片付けない。ネグレクトに近い状態で育ってきた鴫崎は仕方ないとしても、奉も食った後全然食器を下げたり軽く片付けたりしないのだ。洞ではもちろん、学食でも食器置きっぱなしでふらりと何処かへ行ってしまう。渋々二人分の食器をさげながら、ふと『おかしいのは俺の方なのか?』と錯覚しかけることがある。
「供え物をするのも片付けるのも、ヒトの仕事だろう」
俺の視線に気が付いたのか、奉が居心地悪そうに身じろぎした。
「きじとらさんが居なくなっても俺はお前の世話なんかしないからな。…で、何かまた問題が起きたって?」
「何だ、聞いてたのか」
「当たり前だ」
奉が実家に戻ったと聞いた時から、厭な予感がしていた。いくら無精者で尊大で傲慢な堕落神とはいえ、幼馴染には変わりないのだ。変な死に方をされれば寝覚めが悪い。
「……ぬらりひょん、という妖は知っているな。有名どころだからねぇ」
笑いを含んだ声で呟きながら、奉が俺の目を覗き込んで来た。…何かを探るように。
「まぁ…ゲゲゲの鬼太郎とかで見た事がある程度に」
「そんな認識でいい」
紫煙をくゆらせながら、奉が語り始めた。
夕暮れ時や、人の出入りが激しく忙しい頃、そっと人の群れに紛れ込み、その居場所に
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