ぬらりひょん
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配送伝票に目を走らせると。
「……おい、鴫崎。宛先見ろ」
「あぁん?宛先??」
面倒臭そうに伝票を覗き込んだ鴫崎が………崩れ落ちた。
配送伝票の宛先は玉群神社ではなく、玉群の実家だった。
雪まみれの俺達が玉群の玄関に辿り着いた頃、あのくそ堕落神は離れで餅焼いて食っていたらしい。ほうほうの体で椅子を運び込んだ俺達を、阿呆を見る目でちらりと一瞥して、奴は黙々と餅を食い続ける。
「―――おい、俺達に何か云うことはないか」
鴫崎が炬燵でのぼせかけている奉に詰め寄る。どうせうやむやにされて躱されるのに。
きじとらさんが運んで来てくれた茶を両手で包むと、漸く生き返った心地がした。最近こんな事ばっかりだ。縁側に置かれた七輪の傍で、エマさんが餅を焼いてくれている。手伝いますか、と声を掛けたがにっこり笑って首を振った。…こういう大人の女もいいなぁ。俺の周りには居ないタイプだ。
「云う事があるとすれば…伝票はしっかり見ないといかんねぇ。時間指定の荷物だというのに」
「毎日毎日!どっかのインチキ神社に日参してるもんでなぁ!!玉群奉って宛名を見ると条件反射でなぁ!!」
「これから暫く雪が続くというじゃないか。まじで陸の孤島になりかねない山頂の神社に籠る阿呆があるか」
「うふふふ…お二人ともそこまでになさいな。お餅が焼けたわよ。砂糖醤油にしちゃったけど、良かったかしら」
「あ、どうも!」
さっきまでの不機嫌は何処へやら、鴫崎は相好を崩してエマさんから餅を受け取った。目は常にエマさんの胸元を追っている。俺は鴫崎ほど露骨にガン視は出来ないが、ふとした瞬間にどうしても、そのざっくりと開いた黒のニットの胸元に目がいってしまう。…寒くないのかな、という見当違いな感想もちらと脳裏をよぎる。それだけだ。他意はない。断じてない。
「そうか…雪がおさまるまでは居るのか」
『屠られた子供たち』に嵌められたとはいえ、俺がつけてしまった深い傷跡はまだ、うすく体中に残っている。そんな目に遭っておきながら、なぜこの家に戻れるのだろう。
「何でだ。お前今度こそ殺されるぞ?」
熱々の餅を頬張りながら鴫崎が尋ねる。文庫本を片手に茶をすすっていた奉は、こちらを一顧だにせず答えた。
「そう思って近づかないようにしていたんだがねぇ。あの件で思い知らされたんだよ」
俺がどこに居ても、あいつらは追ってくるよ。そう呟いて奉は湯呑を置いた。
「なら何処に居ても同じってわけか」
「それにあの件からこっち、あいつらからのちょっかいは無いんだねぇ。秋の終わりくらいまで感じていた、あの息苦しさが弱まっているようだ」
「―――油断はするなよ、奉」
「いや、するさ」
は!?何で!?俺が目を剥いて奉を睨むと、こいつは面倒くさそうに仰向けに倒れた。
「ここ暫く色々あり過ぎなん
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