第五話 思いを成し遂げるには
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認定特異災害――ノイズ。安心できる所に来て、ようやく感じた安心。同時に込み上げてくる恐怖。
「畜生……」
壁に寄りかかり、天井を見上げる。
先ほどまでつらつらと吐き散らかしてきた啖呵が妙に気恥ずかしくなってきた。言葉が軽い、まで卑屈になるつもりはない。だが、それでも。
「ん?」
誰かに呼ばれたような気がした。
確証は無いのだが、歩く鳳の足取りに迷いはなく。
もちろん、ここで引き返しても良いのだ。しかし、そうしてしまえば二度と今みたいな言葉すら言えないような気がして。
「ロックが掛けられていない……」
タッチパネルに手を翳すと、扉が自動的に開いた。
中は暗く、何も見えない。手探りでスイッチを入れると、明かりがついた。
小さな研究室、というのが第一印象だ。
ふとデスクの上にあった物を見て、鳳は驚きで目を見開いた。
これは紛れもなく、あのライブ会場で自分の命を助けてくれた黒服の男が持っていたトランク。何やら得も知れぬ気持ちに襲われて。
鳳は気づけばトランクを開けていた。
「これは銃と、鈴?」
収められているはナックルガードが付いた拳銃であった。銃身は短く、しかも上下に二つ並んでいるという特異な外見。そして隣には鈴型の装置らしき物体。
思わず手に取っていた。
自分を救ってくれた黒服が最期まで大事そうに抱えていた物だったというのもあるが、それとは別に何だか『手に取れ』と言われたような気がして。
「ふらりと出歩いたと思えば、随分とお目が高いな」
「っ!?」
振り向くと、弦十郎が怒っているとも呆れているともつかない表情で腕を組んでいた。
「全く……俺だったから良いが、また翼に怒られるぞ」
「見つかれば終わりの旅だったので、それは別に良いです」
「はっはっは。その意気やよし。ところで……」
視線は鳳が握っている銃へ。感慨深げに目を細めると、弦十郎は鳳の肩を軽く叩いた。
「そいつが気になるか?」
「……俺の命を救ってくれた人が大事そうにしていたから。……だけど」
「報告は聞いている。君を守り、炭素となったのはずっと史郎君を護衛していた者だ」
「父さんを?」
「ああ、間違いない」
絶句した。同時に、自分の甘さをようやく痛感した。
あの黒服は自分の事など知らなかっただろう。自分がずっと守っていた父親の息子だなんて。だが、それでも命を賭して、自分を守ってくれた。
気づけば、自分が握っていた銃の重量がどんどん増してきたように感じてしまった。命の重さ、とでも言うのだろうか。
そんな鳳を見透かしたように、弦十郎は問うてくる。
「重いか?」
「……重い。こんなに重いとは、思わなかった」
「君という命はそれだけの重み
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