第一章 天下統一編
第二十二話 夜襲
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。だが、俺はそれを制止し、屋敷に向かって近づいていき曽根昌世の隣に立ち足を止めた。曽根昌世はすぐさま膝を折り頭を下げた。
「私は関白殿下の甥、小出相模守俊定、である!」
俺は大きな声で叫んだ。屋敷からは何も反応がない。
「降伏し投降すれば私の客人としてもてなそう。しかし、降伏を拒否するならば容赦はしない。女は雑兵どもの慰み者とし、子供は人買いに売り飛ばしてやる!」
俺は敢えて怒気の籠もった声で屋敷に向け声を放った。
「内匠助、鉄砲を屋敷に撃ち込め。鉄砲を持っている者はいるか? いないなら勢佑を呼べ!」
「おります。殿のご命令だ。屋敷に鉄砲を撃ち込め」
曽根昌世は俺の剣幕に動ずることなく、侍に声をかけ鉄砲を用意させた。屋敷に向けて斉射するために足軽達が屋敷に対して横方向一列に並ぶ。
「殿、準備が整いました」
俺は曽根昌世から声をかけられると、刀を抜き刃を屋敷に向けた。
「放て――!」
俺の叫びとともに屋敷に銃弾がめり込む板壁を貫通していった。すると女子供の泣き叫ぶ悲鳴が屋敷から聞こえていた。
「江川英吉、これが最後だ。貴殿には二つの道がある。一族を守る道。残りは一族を滅ぼす道だ。徳川殿とは連絡がついていないのだろう? 徳川殿はお前達を救ってはくれんぞ」
俺は冷酷な口調で屋敷に向かって叫んだ。
悪人になった気分だ。
罪悪感しかない。
「江川が生き残る道は関白殿下の慈悲に縋る以外にない。徳川殿では江川を救うことはできない。韮山城攻めがはじまる頃から、徳川殿は貴殿に連絡を寄越したか?」
俺は屋敷に籠もる者達に毒を吐いた。屋敷に籠もる者達が江川一族なら、徳川への不信は深まっているに違いない。
屋敷に反応は無かった。これまでか。
これで最後だ。
「五つ数える間に屋敷より出てこい。出てこなければ望みの末路を与えてやる」
俺は自分で話ながら極悪人ぶりに罪悪感を感じていた。だが、脅し騙してでも流れる血を少なくできるならそれに超したことはない。北条氏規に活路はない。この江川砦は大手門から侵入している敵を排除するため存在だ。この砦が潰れたら大手門からの敵の侵入を阻むことはできない。
俺はゆっくり五つ数えることにした。そして、五つ数え終わった。
屋敷の反応はなかった。俺は刀の刃を屋敷に向けた。既に鉄砲の準備は整っていた。俺は発砲とともに兵に命令を下すことにした。
心臓が苦しい。
「お待ちくだされ!」
屋敷から老いた男の大声が聞こえてきた。屋敷の銃弾でぼろぼろになった横開きの扉がゆっくりと開き、中から具足に身を包んだ老将がゆっくりとした足取りで出てきた。彼は俺の元まで近づくと地面に腰を下ろし、俺に平伏した。
「伊豆国人衆、江
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