第一章 天下統一編
第二十二話 夜襲
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からは時間との勝負だ」
俺は低い声でつぶやいた。俺が大手門の様子を観察していると、俺の後方から金属音が擦れる音と兵馬の足音が聞こえてきた。曽根昌世率いる足軽主体の三百の兵だ。俺の軍の大半の兵を曽根昌世に任せることにした。
曽根昌世はすれ違いざまに俺に黙礼をして大手門へ向かっていった。
ここまでは筋書き通りだ。敵が俺の思惑通りに動いてくれればいいが、北条氏規が江川砦の状況に気づけば後詰めを出すだろう。
そうはさせない。その前に江川砦を落としてやる。
城攻めから半刻が経過した。
曽根昌世が江川砦の攻略についたころだな。俺は顎に指を置き思案した。
そろそろ頃合いだな。
「誰かいるか?」
俺の呼びかけに具足を身につけた小姓が俺に駆け寄ってきた。俺は大手門を凝視したまま、小姓に命令した。
「鉄砲頭に伝えよ。鉄砲組を一組ずつ大手門を通り手筈通り北条軍の後詰めに備えよ」
小姓は一目散に岩室坊勢佑の元へ向かっていた。その後、俺は鉄砲組の最後尾を追うように、旗本を引き連れ大手門を抜けた。大手門の中では藤林正保が俺を待っていった。
「殿、ご苦労様にございます。曽根殿は既に江川砦を攻め落としました」
藤林正保の報告を聞き終わる頃、城中から鉄砲の鳴り響く声が聞こえてきた。もう、北条軍が動いたか。動くだろうな。江川砦が落ちたなら、砦から火の手が上がっているに違いない。
「藤林長門守、お前に旗本全てを預ける。岩室坊勢佑の援護に迎え」
「かしこまりました。殿、曽根殿より伝言がございます。砦内の屋敷に籠もる者達がおり、殿の判断を仰ぎたいとのことです。直ぐに江川砦にお向かいください。この者達に案内をさせます」
藤林正保は視線を後ろに控える黒装束に身を包んだ忍びを紹介した。
屋敷に籠もる者達か。俺の裁可をわざわざ仰ぐということは雑兵というわけではあるまい。曽根昌世の目から見て利用価値があるに違いない。
「案内を頼む」
忍びは俺の言葉に頭を深く下げると、俺を江川砦へと案内してくれた。俺の同行者は柳生宗章だ。
目的の屋敷は直ぐに分かった。俺の兵達が群をなし集まっていったからだ。多分、あそこだろう。ここまで来るまでにおびただしい死体が転がっていった。中には正視できない損傷した死体もあった。月光の鈍い灯りが幸いした。これが昼間なら俺は死体を正視する自信が無い。この血臭は好きになれそうにない。こんな惨状に身を起き続けたら精神に異常をきたす者はでないのだろうか。俺はふと疑問を抱きながら兵達が集まる場所に急ぎ足で歩いた。
「殿、よくぞお越しいただきました」
曽根昌世は俺の姿を確認すると膝を折り俺に挨拶した。俺が到着すると兵士達は左右に退き屋敷への道を作
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