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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第二十二話 夜襲
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放て――!」という掛け声とともに、辺りには鉄砲の放つ炸裂音が鳴り響いた。岩室坊勢佑は短い間隔をおいて二弾目を放つように組頭に指示する。その瞬間、二弾目が一斉掃射される。
 三弾目、四弾目と短い間隔で次々に鉄砲が一斉に掃射される。
 その様は鉄砲が連続して発砲しているように見えた。実際は三人一組の足軽がそれぞれ役割分担して鉄砲の次弾発射までの時間を限界まで短くしている。「言うは易く行うは難し」というが、この鉄砲運用術を実現している組織は限られている。岩室坊勢佑の出自である根来衆と近しい関係である雑賀衆もおなじくこの運用術を実現している。その雑賀衆の頭目・鈴木重秀は、秀吉に一万石で仕え、北条征伐で鉄砲頭として百五十の兵を率いて従軍している。彼に機会があれば会ってみたい。

 俺は鉄砲隊から少し下がった場所で大手門の方角を目をこらし凝視していた。
 鉄砲を大手門に向けて発砲して四半刻(三十分)が経過した頃、視線の先に変化が見られた。固く閉ざされたはずの大手門がゆっくりと開かれていったのだ。

「乾加兵衛はいるか!」

 俺は声を上げ乾正信を呼ぶと、俺の元に背中に俺の軍の旗を背中に指した一人の武者が駆け寄った。彼は片膝をつき「お呼びでしょうか」と俺に頭を下げる。

「鉄砲頭・岩室坊勢佑に伝えよ。銃口の向きを少し上に上げ味方に当たらないように気をつけろとな」

 乾正信は俺に「かしこまりました」と一礼し、岩室坊勢佑の元に走り出した。
 敵か味方か。
 直ぐに分かることだ。敵ならば藤林正保が失敗したことになる。直ぐに応戦する必要がある。後ろに控える曽根昌世を呼び寄せる必要がある。
 俺が思案している内に大手門の扉が大きく開け放たれた。その門の奥から黒装束の一団が出てきた。彼らは右手に松明を握り、それをこちらに向け掲げ、俺達に合図するように、松明を旗のように振っていた。その様子に俺は思わず口元に笑みを浮かべる。
 藤林正保でかした。
 藤林正保は大手門の警備の兵を無力化することに成功したようだ。一か月かけて縄張り図を元にして丹念に城の周りを調べさせた結果が実ったようだ。

「孕石小右衛門はいるか!」

 俺は声を上げ孕石元成の名を呼んだ。孕石元成は俺の元に駆け寄り膝をつき俺の顔を仰いだ。

「お呼びでしょうか?」

 さっきの乾正信と、今俺の目の前にいる孕石元成は俺の馬廻で、この戦闘では伝令役として使うことにしている。

「後方に控える曽根内匠助に準備が整ったと伝えよ。手筈通りに大手門を通り江川砦を急襲しろと伝えよ。あまり有余はないぞ。敵に気づかれる前に江川砦を落とせ」

 伝令役を命じられた孕石元成は「かしこまりました」と一礼し返事すると一目散に後方で走り出した。
 俺は腕組みして大手門を睨む。

「これ
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