巻ノ九十八 果心居士その十一
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「これは」
「左様であられるか」
「はい、近くの川で釣った鯉で野菜もです」
それもというのだ。
「近くの店で買った」
「家のか」
「はい、この家の」
近くの店でというのだ。
「そうしたものです」
「そうなのか」
「味噌も同じです」
味付けのそれもというのだ。
「至ってです」
「普通のものか」
「酒もそうで」
こちらもというのだ。
「精進酒ですが」
「普通の酒を買われたのか」
「左様です」
「成程のう」
「それを美味しいと言われ召し上がられるとは」
果心居士は目を輝かせて幸村に言った。
「有り難いことです」
「いや、実に美味い」
「それは修行に励まれているので」
幸村も筧もというのだ。
「それだけです」
「身体も頭も使ってか」
「腹も減りますので」
「美味いか」
「左様かと」
「そうなのか、そういえば十蔵にしても果心居士殿にしても」
ここでだ、幸村は彼等にこうも話した。
「魚も酒も口にされていますが」
「仙術をしてもですか」
「それについては」
「ははは、それでもよいのです」
「そうなのか」
「はい、仙術といっても妖術と言われもします」
「妖術と言うと聞こえが悪い」
幸村はこう言った。
「そうなるな」
「どうしても」
「うむ、しかしか」
「この違いは心得次第で」
「使う者のか」
「妖術を使うのならば肉も酒もです」
そうしたものを口にしてもというのだ。
「別にです」
「構わぬのか」
「そう言われています、確かに仙術では生ぐさものはよくないといいますが」
「心得があればか」
「よいのです」
「そうしたものか」
「仏教の話ですが釈尊も肉や酒を口にしていましたな」
果心居士はこの話もした。
「そうですな」
「うむ、確かにな」
「それでも解脱されましたな」
「そういえば水滸伝でもじゃな」
この話もだ、幸村は出した。
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