巻ノ九十八 果心居士その十
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「出すべきじゃ」
「さすれば」
「出来るか」
「やってみせます」
必ずとだ、筧は言って実際にだった。
先程使った落雷の術にだ、そこに岩を自由に飛ばす術も使ってみせた。岩は筧の周りを飛び回って彼の身体を守っている。
それを見てだ、果心居士はまた言った。
「早速か」
「使ってみましたが」
「それも見事」
そうだというのだ。
「ではな」
「さらにですな」
「使われよ、ただ二つも三つも術を同時に使うとな」
「その分気力も使いますな」
実際に使ってみての言葉だ。
「むしろ同時に使いますと」
「ただ二つや三つ使うだけでなくな」
「その倍は使いますな」
気力をというのだ。
「これはかなりです」
「左様、しかしな」
「いざという時はですな」
「同時に使うこともですな」
「覚えておくとじゃ」
「力になる」
「そうじゃ、使われよ」
こう筧に言うのだった。
「そして慣れればな」
「次第にですな」
「使う気力も減る」
二つ三つ同時に使うとそれぞれ使う時よりも倍以上に疲れてもというのだ。
「次第にであっても」
「そしてより多く使える」
「やはり慣れることじゃ」
術を使うには、というのだ。
「それが第一じゃな」
「ではこれからも」
「どんどん使われよ」
「修行を積むその中で」
「時に備えてな」
「さすれば」
筧は果心居士の言葉に素直に頷きながらそうした術の使い方も修行を重ねていった、そして休憩の時にはだ。
飯も食った、それは朝も昼も同じでだ。無論夜もだ。
飯を食っていた、今宵の飯はというと。
「よい鯉じゃな」
「左様ですな」
筧は幸村と共に鍋に野菜と共に煮られた鯉を食いつつ述べた。
「この鯉は」
「全くじゃ」
「酒もよいです」
筧はそちらも飲みつつ述べた。
「この酒も」
「そうじゃな」
「普通の鯉と酒ですが」
鍋と酒を出した果心居士の返事だ、無論彼も共に食べて飲んでいる。
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