Lv58 眠れる城の貴族
[10/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
立て続けに起きる非常事態のせいで、少し正気を失っているのかもしれない。
(これじゃ、話にならない。とりあえず、正気に戻ってもらおう)
俺はレイスさんの目の前で、猫だましの如く、柏手を1回だけ、大きく打ち鳴らした。
―― パァン! ――
この厳かな空間に、乾いた柏手の音が響き渡る。
レイスさんは面食らったのか、キョトンとした。
他の皆もビックリしたのか、同じような感じであった。
というか、なぜか俺は注目の的になっていた。
そして、妙な静寂が辺りに漂い始めたのである。
(あ、あれ……なんか知らんけど、皆、俺に注目してる……レイスさんとシェーラさんだけでいいのに……。まぁやってしまったものは仕方ない……話を進めよう)
レイスさんは幾分控えめに言葉を発した。
「な、何の真似だ……コータローさん」
「落ち着いて話をしましょう……熱くなりすぎると、何事も上手くいきませんよ。敵の術中に嵌まるだけです。まずは冷静になってください。話はそれからです。魔物達も、今はまだ、彼女達の命までは取らないでしょうから……」
「しかし……フゥ……わかった」
レイスさんはそこで大きく息を吐き、気を落ち着かせた。
それから少し間を空け、話を続けた。
「コータローさん……貴方は今、命までは取らないと言った。なぜそう言い切れるんだ?」
「それは勿論、魔物達は理由があって、彼女達を人質として攫ったからですよ。無作為に選ばれたわけではありません。とはいえ、彼女達を攫うとまでは、俺も予想できませんでしたがね……」
するとここで、アヴェル王子とウォーレンさんが話に入ってきた。
「無作為に選ばれたわけではないだって……コータローさん、それは本当ですか!」
「馬鹿な……ミロンは魔物達に選ばれたというのか」
俺は2人に頷いた。
「そうですよ。アルシェス王子とフィオナ王女、アーシャ様にイメリア様、そして……ミロン君。魔物達がこの5名を攫ったのは、魔の島に、ある者達を誘き寄せる為なのです。つまり、それが成功するまで、魔物達は命までは取りません。断言しても良いです。ですよね……ヴァロムさん?」
俺はそう言ってヴァロムさんに視線を向けた。
ヴァロムさんはゆっくりと頷いてくれた。
(ホッ……どうやら、通じたようだ……)
ヴァロムさんは王族や太守達に向かい、穏やかに説明を始めた。
「今、我が弟子も申しましたが、この事態は予想外ではあるが、何も心配はござらぬ。魔物達は人質としてアルシェス殿下達を攫ったが、これは理由あってのものですじゃ。ですから、目的が達成するまでは、魔物達も命までは奪わぬでしょう。問題はそれをどう解決するかじゃが……もうそれに関しては手を打ってありますのでな。あとはそれを実行に移すのみですから
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ