Lv51 そして地上へ……
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る事はありません。どうか、貴方だけでも生き延びて、壺の始末をお願いします」
「しかしじゃな、お主……」
「構いません。どの道、私はこの場から動けません。ここに留まる以外できないのです。気にせず、先程のお願いを実行してください」
「お主……ここに留まるという事は、どういう事かわかっておるのか? お主は死ぬという事なのだぞ。魔物によってではない。餓死するという事だ。ここには食料がない。お主の出血量……あれは死んでいてもおかしくないほどの量じゃった。何も飲まず食わずでは、その血も作られんという事じゃ。わかっておるのか?」
「わかっております……神殿関係者にバレたときから、何れこうなるだろうとは思っておりました。ですから、お願いです……私は、この国が魔物達に滅ばされるなどという事があってほしくはないのです……どうかお願いします」
老人は静かに頷いた。
「わかった……お主の覚悟見せてもらった。お主の願い、必ずや達成しようぞ……」
「よろしくお願いします」――
それから暫くして、老人はあの壺を持ち、洞窟を後にした。
その際、老人はこう告げて出て行った。
「一切、物音をたてるでないぞ。そうすれば、恐らく、魔物達には気づかれん筈じゃ。壺を始末したら、儂はまた帰って来る。お主はそれまで頑張るんじゃぞ。良いな」
私はゆっくりと頷いた。
そして、私は息を潜め、静かにこの場に留まったのである。
私は岩の天井を見上げながら、ぼんやりと考えた。今どこにいるのだろうと……。
恐らく、オヴェール湿原のどこかにある洞窟だろう。
耳を澄ますと魔物達の声が聞こえてくるが、この空洞内に入ってくる気配はなさそうであった。
そして更に時間が経過すると、魔物達の声も聞こえなくなり、不気味な静寂だけが辺りに漂うようになったのである。
恐らく、魔物達は撤収したのだろう。
私はそこで気力を振り絞って、なんとか体を動かした。それは勿論、私がすべき、最後の仕事をする為である。
私は老人が出てゆく際、3つのお願いをした。
1つは、懐にある書記道具を机の上に置いてもらうという事。もう1つは、明かりをできるだけ長く灯してもらうという事。そして最後に、ある物をこの部屋の最も暗い場所に隠してほしいというお願いである。
私は這いつくばりながらも、なんとか机に向かい、そこにある椅子に腰かけた。
そして、最後の気力を振り絞って、遺言を書き記すことにしたのだ。
いつの日か、この場所に訪れし者に、私が見た真実を伝える為に……。
最後になるが、私が隠したある物を見つけれたならば、イシュマリア王家に返却してもらえないだろうか。それが私からの最後のお願いである。
願わくば、訪れし者がイシュマリアの民であらんことを……】――
アヴェ
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