Lv49 悪鬼の最期( i )
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いや、それがまだ残ってたな。皆、魔力がかなり消耗してるから、俺だけがサボるわけにはいかないか……。仕方ない……あまり使いたくはないが、祈りの指輪を使おう……)
というわけで、指輪が壊れないよう祈りながら魔力を少し回復した後、俺も負傷した者達の治療に取り掛かったのである。
―― それから約20分後 ――
負傷者の治療は割とすぐに終わった。
なぜなら、そこまでの怪我人はいなかったからだ。
あんな恐ろしい魔物と戦ったにも拘らず、俺達の中から戦死者は出てこなかったのが幸いであった。
この中では一番重傷と思われるリタさんとコッズさんであったが、酷い打撲程度だったので、魔法で十分回復させれたのである。めでたしめでたしだ。
と、その時である。
「ヒィ、ヒィン、ヒィ……兄貴……ごめんよ、兄貴……お、俺が……アホな所為で」
幽霊のように啜り泣く声が聞こえてきたのである。
俺は発生源に目を向けた。
声の主は勿論ボルズであった。
ボルズは仰向けになったバルジさんの前で、四つん這いになり、泣きじゃくっていた。
そして他の皆はというと、それを見て、気まずそうな表情を浮かべているのである。
(あ……そういや忘れてたわ、バルジさんの事……う〜ん、なんかこの空気の中だと切り出しづらいなぁ……)
と、そこでクレアさんと目が合った。
クレアさんは微妙な表情をしていた。
多分、どうしていいのか、わからないのだろう。
(仕方ない。俺がやった事だし、自分で始末つけるか)
俺はボルズに近づくと声を掛けた。
「あのさ、ボルズ……ちょっといいか」
ボルズは振り向く。
その表情は、鼻水と涙で凄い事になっていた。
「なんだ……グズ……コータローさん」
「その……なんだ……言いにくいんだが……ちょっとバルジさんに用があるんだ」
「は? 兄貴に用?」
「ああ」
俺はポリポリと後頭部をかきながら、バルジさんに告げた。
「あの、バルジさん……もう死んだフリは良いですよ。とりあえず、一難は去りましたので」
バルジさんはゆっくりと瞼を開け、口を開いた。
「そ、そうですか」
「へ?」
ボルズはポカンと口を開けながら、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をしていた。
他の皆も驚いたのか、ボルズと同じような表情をしている。
ここから察するに、全員、死んだと思っていたのだろう。
つーわけで俺は、誤魔化す意味も込めて、爽やかに事の顛末を説明したのである。
「ははは、いやぁ〜、実はですね、バルジさんは俺の治療が間一髪間に合ったので、死んではいなかったんですよ。ははは、すまないな、ボルズ、驚かせちまったか。なははは」
「あ、兄貴が生きていた……」
ボルズはこの事実を知り、力が抜けたのか、後ろにゆっくりと倒れ、
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