暁 〜小説投稿サイト〜
Dragon Quest外伝 〜虹の彼方へ〜
Lv43 魔窟からの帰還( i )
[10/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
てくれた時、なぜ、バネッサ姉を治療してくれなかったの……。あの時、バネッサ姉はまだ生きていたわ。酷い怪我だったけど、まだ息があったわ……何で治療してくれなかったの……何で……何で……」
 リタさんの目は、見る見るうちに潤んできた。
 そして、大粒の涙が頬を伝ったのである。
(俺を時々睨んでいたのは……これが理由だったのか。ようやく、わかったよ)
 バネッサ……確か、3日前にあったルイーダの酒場での話だと、リタさんが姉のように慕う冒険者の名前だった気がする。
 まぁそれはともかく、あの時、治療しなかった冒険者は、その殆どが、身体欠損や内臓欠損に加えて出血多量であった。
 治療しても、生存の見込めない状態の者達ばかり……。
 ウォーレンさんもそれがあったが故に、俺に治療をお願いしなかったのだろう。
 あの状況では、命を助けられる者を優先せざるを得なかったのだ。
「リタさん……あの時、俺はウォーレンさんの指示を受けて治療に当たりました。なので、俺も偉そうな事は言えません。ですが、1つだけ確かな事があります」
「そ……それは……グス……何?」
「あの時治療しなかった方々は……例え治療をしても、もう生存は見込めない状態だったという事です。四肢や臓器の欠損、それに加えて、出血量も多すぎました。つまり……生きる為に必要なモノが欠けていたのです。ウォーレンさんもそれが為に、俺に治療を指示しなかったのだと思います。あの状況下では……治療によって生存を望める者を優先せざるを得なかったんです……」
「ヒィン……ヒィィアァァ」
 リタさんは両手で顔を覆い、泣きじゃくった。
 そして馬車内に、重く悲しい空気が漂い始めたのであった。


   [V]


 日も少し傾き始める夕暮れ前に、俺達は王都へと帰って来れた。
 もう少しかかるかと思ったが、ラティに教えてもらった近道を来たので、2時間程の短縮ができたようだ。ラティに感謝である。
 まぁそれはさておき、王都へと帰ってきた俺達は、とりあえず、ルイーダの酒場へと向かう事になった。皆、流石に疲れたようで、そこで一杯やろうという事になったのである。
 馬車がルイーダの酒場へ到着したところで、御者席からラッセルさんの声が聞こえてきた。
「じゃあ、俺は厩舎に馬車を預けてくるから、皆は先に入って休んでいてくれ」
「わかったわ」と、マチルダさん。
 その言葉を号令に、俺達は馬車を降りた。
 そして、ラッセルさんは厩舎へと馬車を走らせたのである。
 馬車が去ったところで、シーマさんが口を開いた。
「じゃ、中に入ろっか」
「ええ」
 するとそこで、リタさんが俺を呼び止めたのである。
「待って……コータローさん」
 まだ、何か納得いかない事があるのかもしれない。
「ン、どうかしましたか?
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ