Lv43 魔窟からの帰還( i )
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、俺は再度、リタさんに呼びかけたのである。
「リタさん……治療は終わりました。帰りますよ、ここは危険だ」
「バネッサ姉……」
リタさんの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
(心、ここに在らずって感じだな。仕方ない。強引に立たせるしかないか……ン?)
するとそこで、リタさんはゆっくりと体を起こしたのである。
リタさんはボソリと呟くように言葉を発した。
「……ごめんなさい。私の所為で迷惑をかけて……」
「もう終った事です。次は注意してください。今は王都に帰る事だけ考えましょう」
「うん……」
リタさんは元気が無かった。
鬱に近い状態なのかもしれない。これはかなり時間が掛かりそうである。
と、ここで、ラティが俺の所にやって来た。
「コータロー、ワイが見た感じやと、周りには今のところ魔物はおらんみたいや」
「フゥ……とりあえず、一難は去ったか」
「せやけど、はよ離れた方がええで。ここにいる奴等、どれも厳つすぎるわ」
「ああ、そのつもりだよ」
程なくしてラッセルさん達もこっちにやって来た。
元気なところを見ると、どうやら傷の心配はなさそうだ。
「コータローさん、ラッセルの傷はもう大丈夫よ」
ラッセルさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すまない、コータローさん。……妹の所為で、こんな事になってしまって」
「それはもういいです。早いとこ、ずらかりましょう。ここは危険ですから」
「ええ」――
[U]
戦いの治療を終え、変化の杖で魔物に再度変装した俺達は、すぐに移動を再開した。
そして、来た抜け道を戻り、隠しておいた馬車に乗り込むと、俺達は脇目も振らず帰路に就いたのである。
これはその道中の話だ。
帰りは行き以上に、皆は言葉少なであった。
リタさんに至っては、体操座りをしながら俯いたままで、一言も声を発しなかった。精神的な深い傷が、彼女を苦しめているのだろう。
他の皆はそんな彼女を気遣ってか、誰も話しかける事はおろか、一言も言葉を発しないという状況であった。
その為、この馬車内はかなり重苦しい空気が漂っているのである。
(はぁ……重い、重すぎる。まぁゼーレ洞窟の現状と、リタさんの暴走もあったから、こうなるのはわからんでもないが、この調子で王都まで帰るのは流石に気分が滅入るな。かといって、冗談を言う雰囲気でもないし……)
などと考えていると、そこで、KYのラティが俺に話しかけてきたのである。
「なぁコータロー、ゼーレ洞窟の事はどないするんや? ヤバイでアレ……多分、冒険者では手に負えんと思うわ」
(こういう時のラティのKYっぷりは助かるな……)
するとそれを皮切りに、マチルダさんとシーマさんも話に乗っかってきた。
「そうよ。あれはもう、冒険者では荷
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