暁 〜小説投稿サイト〜
Dragon Quest外伝 〜虹の彼方へ〜
Lv43 魔窟からの帰還( i )
[7/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、俺は再度、リタさんに呼びかけたのである。
「リタさん……治療は終わりました。帰りますよ、ここは危険だ」
「バネッサ姉……」
 リタさんの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
(心、ここに在らずって感じだな。仕方ない。強引に立たせるしかないか……ン?)
 するとそこで、リタさんはゆっくりと体を起こしたのである。
 リタさんはボソリと呟くように言葉を発した。
「……ごめんなさい。私の所為で迷惑をかけて……」
「もう終った事です。次は注意してください。今は王都に帰る事だけ考えましょう」
「うん……」
 リタさんは元気が無かった。
 鬱に近い状態なのかもしれない。これはかなり時間が掛かりそうである。
 と、ここで、ラティが俺の所にやって来た。
「コータロー、ワイが見た感じやと、周りには今のところ魔物はおらんみたいや」
「フゥ……とりあえず、一難は去ったか」
「せやけど、はよ離れた方がええで。ここにいる奴等、どれも厳つすぎるわ」
「ああ、そのつもりだよ」
 程なくしてラッセルさん達もこっちにやって来た。
 元気なところを見ると、どうやら傷の心配はなさそうだ。
「コータローさん、ラッセルの傷はもう大丈夫よ」
 ラッセルさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「すまない、コータローさん。……妹の所為で、こんな事になってしまって」
「それはもういいです。早いとこ、ずらかりましょう。ここは危険ですから」
「ええ」――


   [U]


 戦いの治療を終え、変化の杖で魔物に再度変装した俺達は、すぐに移動を再開した。
 そして、来た抜け道を戻り、隠しておいた馬車に乗り込むと、俺達は脇目も振らず帰路に就いたのである。
 これはその道中の話だ。

 帰りは行き以上に、皆は言葉少なであった。
 リタさんに至っては、体操座りをしながら俯いたままで、一言も声を発しなかった。精神的な深い傷が、彼女を苦しめているのだろう。
 他の皆はそんな彼女を気遣ってか、誰も話しかける事はおろか、一言も言葉を発しないという状況であった。
 その為、この馬車内はかなり重苦しい空気が漂っているのである。
(はぁ……重い、重すぎる。まぁゼーレ洞窟の現状と、リタさんの暴走もあったから、こうなるのはわからんでもないが、この調子で王都まで帰るのは流石に気分が滅入るな。かといって、冗談を言う雰囲気でもないし……)
 などと考えていると、そこで、KYのラティが俺に話しかけてきたのである。
「なぁコータロー、ゼーレ洞窟の事はどないするんや? ヤバイでアレ……多分、冒険者では手に負えんと思うわ」
(こういう時のラティのKYっぷりは助かるな……)
 するとそれを皮切りに、マチルダさんとシーマさんも話に乗っかってきた。
「そうよ。あれはもう、冒険者では荷
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ