Lv33 王都オヴェリウス
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ピュレナの丘を抜け、その先に広がる褐色の荒野を俺達は進んでゆく。
だが王都へと近づくにつれ、荒れた野は徐々に鳴りを潜め、周囲は次第に、美しい緑の草原が広がる風景へと変化していた。それはあたかも、今まで進んできた道のりを逆再生しているかのようであった。
そして、緑の草原を更に進み続けると、周囲はいつしか、幾つもの湖や沼が点在する、瑞々しい緑の湿原へと変貌を遂げていたのである。
ラティの話によると、この辺りはオヴェール湿原と呼ばれている所だそうだ。
豊かな自然の営みが見られる所で、湿原にある小さな湖や沼には、そこで羽を休める水鳥や水面を飛び跳ねる水生生物の姿が確認できる。また、その畔には葦のようなイネ科の雑草が群生していた。
水分を多く含む陸地部分に目を向けると、辺り一面に青々とした苔の様なモノが覆っており、その様子はまるで、フカフカの緑のカーペットが敷かれているかのようでさえあった。
しかも、このオヴェール湿原には背の高い木々が殆ど見当たらない事から、見渡す限りの開放感と豊かな自然を感じられる、美しい水と緑の園となっているのである。
とはいえ、決して良い面ばかりではない。
ラティが言うには、今の時期は良いらしいが、雨季であるゴーザの月になると、高温多湿の上に害虫なんかが大量発生して、とてもではないが、人の住めるような状態ではなくなるそうだ。
つまりこのオヴェール湿原は、鳥や昆虫、その他の動物には楽園かも知れないが、人が居住するには少々過酷な環境なのである。この辺りに町や村がないのは、恐らく、これが理由なのだろう。
ましてや、雨季ではない今ですら、生臭いジメジメとした空気が漂っている事を考えると、ゴーザの月のオヴェール湿原が過酷な環境になるのは、想像に難しくないのである。
言っちゃなんだが、俺は日本の梅雨時期が大嫌いだ。
そんなわけで俺からすると、景色は美しいが、あまり長居したくない場所とも言えるのであった。が、しかし……今はそんな事を考える余裕など、俺にはなかった。
なぜなら、俺達に迫りつつある危機に比べれば、その程度の不満など些細な問題だからだ。
そして俺は今、その事について、頭を悩ませているところなのである。
俺は周囲を警戒しながら、心の中で溜め息を吐いた。
(はぁ……王都に近づくにつれて、シャレにならないくらい魔物も強くなってきている。下手を打つと、全滅もあり得るかもしれない。はぁ……やだなぁ、もう……早く王都に着かないかなぁ……)
そう……実はこの湿原に入ってからというもの、その美しさとは裏腹に、えらく凶暴な魔物と遭遇する事が多くなってきたのである。
ちなみに遭遇した魔物はと言うと、リカントマムルと思われる茶色い狼男型の獣人や、ガメゴンと思われる亀と竜
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