Lv32 ラティと共に去りぬ
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動作は、そこまで万能ではないという事を暗に示した行動なのである。
そして奴ほど用心深い魔物ならば、その事に気付いていない方が逆におかしいのだ。
俺は話を続ける。
「それにだ。扉の隙間から見た女性とのやり取りを思い返すと、奴は、逃げ場のない建物の構造を知っていたから、あそこで犯行に及んだみたいだった。それだけじゃない。奴は俺にこんな事も言ったんだよ。『どうして此処に、貴様のような輩がいる』ってな。つまりあの魔物は、俺の様な奴は近くにいないと、頭から決めつけてあの建物に来たんだよ。神殿の外に、あれだけ沢山の冒険者や巡礼者がいるのにもかかわらずな。となると、奴はなぜ、そう決めつける事ができたのか?って事になるが、それは奴自身がここの内情をよく知っていたと考えるのが自然なんだ。だから、いる筈のない俺に驚いたのさ」
ラティは目を大きくして驚いた表情を浮かべた。
「ほえ〜、コータローは凄いなぁ。色々と考えてるんやな。感心するわ」
「まぁ要するにだ。奴は近衛騎士の数と中にいる神官の数、そして建物の構造やその周囲の状況を全て知った上で行動していたという事さ。あの程度の強さの魔物が単独で乗り込んで来るなんて事は、状況を熟知してない限り無理なんだよ」
「なるほどなぁ……となると、奴がそれらの情報得ていた方法というのが気になるなぁ」
俺は指を3本立てると言った。
「それには3つの事が考えられる。まず1つは、神殿内に奴と結託している者がいるかも知れないという事。2つ目は、奴自身が神官に化けていた可能性があるという事。それと3つ目は、奴自身か、もしくはその手勢の者が、神殿内に隠れ潜んで情報収集していたという事だ。まぁ今まであった俺の経験から言うと、1と2の可能性が高いと思ってるけどな」
「せやからあのねぇちゃんに、あそこにいるモン以外、気を許すなって言ったんか。納得やわ」
「まぁそういうわけだ。さてと……」
俺はそこで立ち上がり、右手に持つ禍々しい杖に目を向けた。
(……後はこれをどうするかだが、こんな物騒な物を皆の所に持って行くわけにはいかないし、かといってその辺に放るわけにもいかない。ここはまず、ラーのオッサンの意見を聞くのが無難か……だがそうなると、ラティがいるこの場では都合が悪い。仕方ない……適当にそれっぽい理由をつけて、ラティには先に帰ってもらうとするか)
というわけで、俺はラティに言った。
「ラティ、悪いんだけどさ、先に皆の所へ戻っていてくれないか」
「なんでや、一緒に行かんの?」
俺はラティに杖を見せた。
「これは呪われた危険な武具のようだから、誰も触れないように封印しようと思うんだ。でも、どれだけ時間が掛かるかわからないから、ラティだけでも先に帰って、皆に顔を見せておいてほしいんだよ。流石にこれ以上遅くなると、向こうも
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