Lv32 ラティと共に去りぬ
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バルログが息絶えたのを見届けたところで、俺は魔光の剣を仕舞い、女性に視線を向けた。
すると女性は、胸と股間を手で隠しながらバルログと俺を交互に見詰め、何が何やらわからないといった感じであった。
まぁこういう反応になるのも当然だろう。この施設の特性上、ここに魔物や俺みたいな男がいること自体、有り得ないのだから。
とはいえ、このまま黙っているのも気まずい。おまけに、全裸の女性をジロジロと見るのも失礼であった。
その為、俺はクルリと女性に背を向け、それから話を切り出したのである。
「あのぉ、お怪我はありませんでしたか?」
「え? は、はい……ありがとうございました」
怪我は無いようだ。目的は達成である。
これ以上ここにいると面倒な事になりそうなので、俺は撤収する事にした。
「それはよかった。では、私はこれにて失礼します」
「ま、待ってください。あ、貴方は一体、誰なのですか?」
俺は後ろを振り返らず、簡単に答えておいた。
「名乗るほどの者じゃありませんよ、お嬢さん。ただの通りすがりの親切な魔法使いだとでも思っておいて下さい。では、アディオス」
意味もなく、スペイン語で別れを告げた俺は、逃げるように入口へと向かい歩き出す。
だがその時であった。
「お〜い、コータロー! 誰かこっちに来るで!」
なんとラティが、俺の名前を呼びながら、ここに現れたのである。
この予想外の展開に、俺は思わず額に手をやり、アチャーという仕草をした。
背後から女性の声が聞こえてくる。
「ドラキー便の配達員がなぜここに? いえ、それよりも……今、その配達員がこーたろーと言いましたが……それが貴方の名前ですか?」
とりあえず、俺は適当に誤魔化すことにした。
「いえ、違いますよ。彼は今、お〜い、向こうからー、と言っていたのです」
ちと苦しいが、発音によっては、そう聞こえん事もない。これで押し切ろう。
などと考えていると、ラティが全てを台無しにしてくれたのである。
「何言うてんねん。コータローは自分の名前やがな」
(はい、終了です)
どうやらこのドラキーは、空気を読むという芸当は出来んみたいだ。♯ガッデム!
と、そこで、ラティが驚きの声を上げた。
「おお! さっきの黒いローブはコイツやったんか。しかし、またエライ強そうな奴っちゃなぁ。ワイもこんなん初めて見るわ」
「実際、強かったぞ。俺も倒すのに、結構苦労したからな」
「しかし、ようこんな厳つい奴倒せたな。感心するわぁ。って感心してる場合やないわ。それより、向こうから誰か来てるで、どないする?」
そうだ。これを利用してトンズラしよう。
俺は女性に言った。
「向こうから誰か来ているみたいなので、とりあえず、外の様子を見てきますね
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