Lv30 巡礼地ピュレナ(i)
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服を纏った神官が一歩前に出る。
それから神官は少女に向かい、恭しい所作で、中へ入るよう促したのである。
「ではフィオナ様……神授の間への道は開かれました。さ、中へお進みください」
フィオナと呼ばれた少女は無言で頷くと、通路の奥を見詰め、意を決したように口元を引き締める。
そして少女は、艶やかな赤く長い髪を颯爽と靡かせながら、神官と護衛を引き連れ、前へと歩き始めたのである。
台座の中へと入った一行は、その先に続く、魔物と人々の戦いが描かれた壁画の通路を脇目もふらずに進んで行く。
暫く進むと、一行の前に白い壁が現れた。通路はそこで行き止まりであり、壁の中心には、イシュラナの紋章が大きく描かれていた。
一行はその壁の前で立ち止まる。
と、そこで、先程の赤い神官服を纏った神官がフィオナに頭を垂れ、恭しく口を開いたのである。
「これより先は、イシュマリアの血族にのみ許された聖域。我等はこちらで、フィオナ様の帰りをお待ち致しております」
フィオナは無言で頷くと、白い壁へと近づく。
そして、イシュラナの紋章に手を触れ、静かに言葉を紡いだのである。
「我が名はフィオナ・ラインヴェルス・アレイス・オウン・イシュマリア。女神イシュラナが御子であるイシュマリアの末裔なり、ここにその証を示す。――マルゴー・ケイル・ラーヒ――」
次の瞬間、イシュラナの紋章が眩く光り輝き、白い壁が横にスライドしていった。
壁の向こう側も壁画の通路が続いていた。が、今までのような通路ではなく、白く淡い光が漂う安らぎを感じさせる不思議な通路となっていた。
道が開かれたところで、フィオナは居ずまいを正し、通路に足を踏み入れる。
すると、その直後、白い壁は部外者を遮るかのように閉まり、この場は神官と護衛の者達だけとなったのである。
背後の壁が閉じたところで、フィオナは前へと歩き始めた。
程なくして、行き止まりとなったドーム状の丸い部屋が、フィオナの前に現れる。
フィオナはその部屋に入ったところで立ち止まり、大きく深呼吸をして心を落ち着かせた。
そこは何もない部屋であった。ただ一点を除いて……。
部屋の中心に、イシュラナの紋章が描かれた白く四角い石版が台座のように安置されている以外、他には何もない。その石板だけがある部屋であった。
フィオナは呼吸を整えた後、その白い石板の前へと行き、そこに跪いた。
そして、石板に描かれたイシュラナの紋章の上に両掌を置いた後、静かに、そしてゆっくりと、言葉を紡いだのである。
【……我が名はフィオナ・ラインヴェルス・アレイス・オウン・イシュマリア。第50代イシュマリア国王 アズラムド・ヴァラール・アレイス・オウン・イシュマリアが次女であります。……遥かなる天上より、慈愛の光にて世を包
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