Lv29 ルーヴェラにて
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どころではないだろう。何か良い方法はないだろうか……。何か良い方法は……ハッ!?)
と、その時、俺の脳裏に、ある道具が過ぎったのである。
ちなみにそれは、昨日手に入れたあのアイテムの事であった。
そう……魔導の手である。
使うなら今でしょ、てなもんだ。
「ふむ、なるほど。では、隊長の忠告には従うとしよう」
とまぁそんなわけで、俺は早速、魔導の手に魔力を向かわせ、屋根の天辺に見えない手を伸ばし、それを命綱のように使いながら、窪みへと近づいて行ったのである。
窪みの手前にやって来た俺は、そこから更に近づく為に、足を一歩前へと踏み出す。
だが、その刹那ッ!
――ズルッ――
ななな、なんとッ!
バナナの皮の上に足を乗せたかの如く、ズルリと俺の足は滑ってしまったのだ。
そしてあろうことか、俺は体勢を維持する為に、窪みへと足を乗せてしまったのである。
その直後、メシッという板の割れる音と共に、俺の右足は屋根板を踏み抜いた。
(ヤ、ヤバッ!)
俺は慌てて、屋根の下側に手を付き、足を引き抜こうとする。
だがしかし!
それがいけなかった。それが、事態をさらに悪化させてしまったのだ。
なぜなら、脆い下側に体重をかけてしまった為に、今度は下側の板からもメシメシという音がし始め、最後にはバキバキという音を立てながら、板が割れてしまったのである。
こうなると後はもう、絶体絶命の最悪な展開が待つのみだ。
「しょ、しょしょしょ、将軍ッ!」
ラティの慌てる声も聞こえてくる。
そして次の瞬間、俺の身体は万有引力の法則に従い、下界へと落ち始めたのであった。
(あわわわッ! おッ、落ちるゥゥゥ!)
だが、しかしぃッ!
この時の俺は冷静であった。
すぐさま魔導の手に意識を向かわせて、魔力をマキシマムに籠め、俺は宿の屋根に向かって見えない手を伸ばしたのである。
そして、自分の身体を引き上げるような形で、一気に地上20mの高さへと飛び上がったのだ。
無我夢中であった。もはや、あれこれ考えている場合ではなかった。
そして、魔導の手を使って一気に宿の屋上へ飛んだ俺は、への字になった屋根の天辺にしがみ付き、「ゼェゼェ」と息を荒くしながら、ホッと胸を撫で下ろしたのであった。
(な、なんとか危機を脱することが出来た……)
下からはガヤガヤと騒ぐ、慌ただしい声が聞こえてきた。
恐らく、俺が踏み抜いた屋根の破片が、浴場に降り注いだからに違いない。はぁ……最悪である。
程なくして、ラティがこちらへとやってきた。
するとラティは敬礼をするかのように片側の翼を曲げ、キリッとした仕草で俺に告げたのであった。
「将軍! ワイは貴方の命がけの行動に敬意を表しますッ。というか、あないな風に
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