Lv29 ルーヴェラにて
[12/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
ラティはウインクする。
「将軍、それについてはご安心を。一度、窓から降りて周囲をご確認ください」
「うむ」
俺は物音をたてないよう注意しながら女湯の屋根の上に降り立ち、周囲をゆっくりと見回した。
(おお、これは!?)
すると、なんと驚いた事に、周囲には背の高い浴場の柵がバリケードのように張り巡らされており、それが死角になって、下からこちらは見る事が出来ない様相となっていたのである。
それだけではない。もう一つ驚くべき事実があったのだ。
それは何かというと、今、俺達が出てきた宿の壁には、窓が1つしかないという事であった。そうなのである……今潜った窓だけが、ここに来るための唯一の道なのである。
つまりッ! 今の俺達の姿は、空飛ぶ鳥ぐらいしか見ることが出来ないのだッ。
これはこう呟かざるを得まい……。
「震えるぞハート……燃え尽きるほどヒート……」
と、ここで、ラティが俺に囁いた。
「コータロー将軍、いかがでございましょうか。これならば、心行くまで、覗きが出来まっせ……じゃなかった。出来ると思われます。それに、今出てきたこの窓は換気用ですので、閉めてしまえば、もはや我々がここにいるなどとは、誰も思いませぬでしょう」
「確かに、そなたの言うとおりだ。ここならばじっくりと堪能できよう。つーわけで、ラティ隊長、そろそろ目的地へと出発しようぞ」
「畏まりました、将軍。では、私の後について来てください」
「うむ」
ラティは移動を開始する。
俺は忍び足でラティに続いた。
程なくしてラティで立ち止まる。
そして、俺に振り返り、ニカッと笑みを浮かべたのであった。
「コータロー将軍、こちらです。この少し窪んだ所に小さな穴が開いておりまして、そこから美しい下界の様子が見渡せるのです」
「うむ。案内、ご苦労であった。後で褒美を遣わすぞ」
俺は喜び勇んで一歩足を前に出した。
だがそこで、ラティは俺を呼び止めたのである。
「将軍、お待ちください。その前に1つ、言っておかなければならない事があるのです」
「言っておかなければならない事とな? して、それはなんであろうか?」
「実は、この窪みの下側は温泉の湿気の影響で、かなり脆くなっておりますので、窪みの上側から覗かれた方が良いかと思われます」
「ほう、上側からとな……」
俺は窪みの下側に目を向ける。
すると、ラティの言ったとおり、窪みの周辺やその下側にある板は、少し黒ずんで瑞々しい色をしていた。どうやら、湿気で腐っているような感じだ。ここは確かに注意が必要である。
つーわけで、俺は暫し考える事にした。
(むぅ……窪みの上からだと屋根の傾斜と重力の影響で、相当苦しい前屈み体勢での見学になるのは必至。いや、恐らく、体勢を維持するのが精一杯で、見学
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ