Lv28 アルカイム街道(i)
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続く山道に、カラカラとした俺達の馬車音が響き渡る。
耳を澄ますと、そよ風に揺れる枝葉のさわさわとした音や、キィキィと鳴く野鳥の声が聞こえてきた。
俺は今まで魔物の襲撃を過剰に警戒するあまり、自然界の音にそれほど気を配ってこなかったが、こうやって耳を傾けてみると、妙に気分が落ち着くものだなと思った。
もしかすると、自然が奏でる何気ない音には、思った以上にリラクゼーション効果があるのかもしれない。
まぁそれはさておき、俺達がガルテナを出発してから20分程経過したところで、前方にV字型になった深い谷が見えてくるようになった。恐らく、あれがモルドの谷と呼ばれる所なのだろう。
谷には頭上を遮る枝葉もない為、空一面がモクモクとした灰色の雲に覆われているのが、ここからでもよく見える。が、見た感じだと雨雲ではなさそうなので、今しばらくは雨の心配をしなくてもよさそうだ。
また、果てしなく伸びる道の両脇には、青々とした草木が生い茂る緩やかな山の裾野が広がっており、その遥か頂きへ視線を移すと、天を突き刺すかのような鋭利な刃物を思わせる山の先端部が、俺の視界に入ってくるのである。
見た感じだと、標高は2000mくらいだろうか……。まぁその辺の事はわからないが、ここはガルテナ連峰と呼ばれる山岳地帯なので、それくらいはあっても不思議ではないだろう。
とりあえず、モルドの谷とはそんな感じの所であった。
話は変わるが、谷の名前であるモルドとは、その昔、この地で活躍した旅の戦士の名前だそうだ。
これはガルテナを出発する前に宿屋の主人から聞いた話なのだが、なんでも、300年ほど前に谷で悪さしていた魔物がいたらしく、それをモルドという戦士が退治してくれた事から、村の者達が感謝の意を込めてそう名付けたそうである。
まぁこの手の英雄譚は日本昔話でもよく見かけるので珍しくもなんともないが、何気ない地名にもちゃんと由来はあるようだ。
つーわけで、話を戻そう。
モルドの谷を暫く進んだところで、ティレスさんから預かっている物があるのを俺は思い出した。
ちなみにそれは、旅が始まったらアーシャさんに渡してくれと言われていた手紙であった。
とまぁそんなわけで、俺は道具入れの中から白い封筒を取り出し、隣に座るアーシャさんにそれを差し出したのである。
「あの、アーシャさん。ティレスさんから預かった手紙があるんですよ。これなんですけど」
「え、お兄様から? 何かしら、一体……」
アーシャさんは首を傾げながら手紙を受け取ると、早速、封を解いて中のモノに目を通していった。
すると次第に、アーシャさんは口元をヒクつかせ始めたのである。
「ん、もうッ! お兄様は、私がコータローさん達と旅をしているのを知っていたのですね。知っていたのなら、ハッキリ
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