Lv16 黒き魔獣
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身を覆い始めたのだ。
この突然の変化に俺達は身構える。
【では準備が整うまで間、暫しお待ちください。どうせ逃げられはしないんです。僅かばかりの時ですが、最後のお祈りでも捧げていて下さい。私からのささやかな贈り物です。ククククッ】
だがそれを聞いた瞬間、俺の脳裏にある考えが過ぎった。
それは……やるなら今しかないという事だ。
今の奴は、完全に勝った気でおり、尚且つ、これ以上ないほどに油断している。
ここを突く以外、俺達が生き残る道はないと思ったのである。
俺は短い時間の中で必死に考えてみたが、どう考えても俺達の方が分が悪い。
もしこれらの魔物がゲームと同様の強さだった場合、物理的な攻撃力と機動力、そして体力と手数の多さは、向こうが1枚も2枚も上なのは間違いないからだ。
勿論、ゲームと同じなどという証拠は何もない。が、今まで出遭った魔物達が概ねそんな感じだったので、恐らく、こいつ等もそれ程の違いというものは無い気がするのである。
だがそうなると、魔物達の数が大きな問題だ。
2、3体ならまだしも、このレベルの魔物が10体となると、こちらも相当の被害を覚悟しなければならない。
その為、今の俺達がまともにやりあえば、下手をすると全滅か、もしくは大打撃を受ける可能性が十分にあるのである。
おまけに、ザルマがこれから何をするのか未知数なのもある。
いや、奴の自信とこの屈強な魔物達を統率している事実を考えれば、かなりの力を持っていると見て間違いないだろう。
だからこそだ。今の内に、他の魔物達の脅威を取り除かなければならないのである。
そして、その為の手段を一刻も早く講じなければならないのだ。
俺はザルマ達に聞こえないよう注意しながら、仲間の4人に話しかけた。
「皆、そのままの体勢で、俺の話を聞いてもらえますか?」
そこで4人は俺をチラッと見た。
「何だ、言ってくれ」と、レイスさん。
俺は話を進めた。
「皆もわかってるとは思いますが、ハッキリ言って、俺達はあまりにも不利な状況です。下手を打つと全滅の可能性もあります。そこでお聞きしたいのですが、4人の中で、この魔物達について多少なりとも知っている方はおられますか?」
まずレイスさんが答えてくれた。
「数年前……ラミナスが魔物の大群に襲撃された時、何回か見た事はあるが……どんな魔物かまではわからない。逃げるので精一杯だったのでな」
「私もだわ」
「……私もです」
「私も初めて見ますわ。恐らく……近頃噂に聞く、新種の魔物だと思いますの」
どうやら誰も知らないみたいだ。
予想してた事だが、皆が知らない以上、ここは俺の判断で切り抜けるしかないようだ。
あまりこんな事はしたくないが、ゲームでいう『命令させろ』を俺がやるしかない。
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