Lv15 旅立ち
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ん」
「あの林ですか……で、熊の様な魔物に襲われたと」
俺は顎に手を当てて今の事を考える。
それから、向こうに見える丘の上の雑木林と、その間にある傾斜した雑草地帯に目を向けたのだ。
しかし、そんな魔物の姿は当然見当たらない。
あるのは、遠くに見える林の木々と、その間の雑草地帯で隙間なく生え揃った草や花だけであった。
俺は質問を続けた。
「それではもう1つお訊きします。お仲間はおられるのですか? 見たところ1人のようですが」
男は頭を振る。
「いいえ、仲間はおりません。私1人です。この辺は勝手の知った場所ですので、よく1人で来るんです」
「そうですか。お答えくださって、ありがとうございました。ところで、これからどこに向かわれるのですか? 我々はこの先にあるフィンドの町に向かう予定なのですが」
すると、それを聞いた男は、途端に明るい表情になった。
「なんと、それは奇遇ですな。実は私もなのです」
「じゃあ、おじさん、乗ってく? 魔物に遭遇したわけだし、1人じゃ気分的に嫌でしょ。それに、どうせ向かう先は同じなんだしね」と、シェーラさん。
「良いのですか?」
「別に良いと思うわよ。ね? コータローさん」
「まぁこうなった以上はね……」
男は深々と頭を下げる。
「あ、ありがとうございます。私の名はロランと言います。どうかよろしくお願いします」
そして、ロランという男は、俺達の馬車に同乗することになったのだ。
馬車が動き始めたところで、俺は御者席にいるレイスさんの隣に移動し、そこに腰かけた。
「ン、どうしたんだコータローさん」
「……レイスさん。あの男、どう思います?」
「どう、とは?」
レイスさんは首を傾げた。
俺は後部座席のロランさんに聞こえないよう耳打ちした。
「さっきあの男は、雑木林で熊の様な魔物に襲われたと言ってましたが……妙だとおもいませんか。その間にある雑草地帯には、そんなモノが通ってきた痕跡はおろか、人が通った痕跡すらなかったんですよ」
「痕跡がない? どういう事だ一体?」
「草や花の上を人や獣が通れば確実に茎が折れます。足で踏みつぶしますから。しかし、あの雑木林から茂みまでの間にある雑草地帯には、そんな形跡はまるでなかったんです。空を飛んであの茂みに入ったというのならわかりますが、あの人にそんな芸当ができるとはとても思えません。という事は、あの茂みの中に暫く潜んでいて、それから俺達の前に現れたという仮説が成り立つんですよ」
俺の話を聞いたレイスさんは、そこであの男をチラ見する。
「確かに、君の言う通りかもしれないが、もしそうならば、我々の馬車に乗せてもらう口実をつくる為に、そんな事をしたんじゃないのか?」
「いやそれならば、そんな小細工はせず、普通に呼び止めるだ
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