第二章 御子の国イシュマリア
Lv13 新たな潮流
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いつもと様子が違うのが気になったが、とりあえず、俺はそこで文字を書く手を止めた。
「重要な話? ……何ですか、一体?」
「突然で悪いのじゃが、儂は明日の早朝、王都オヴェリウスへと向かわねばならなくなった」
「王都に、ですか? それは確かに突然ですね」
ヴァロムさんは頷くと続ける。
「昨日……ここに舞い降りた赤いドラキーの事を覚えておるな、コータロー……」
俺はそれを聞き、昨日の昼頃、この洞穴にやってきた赤いドラキーを思い出した。
多分だが、色からするとメイジドラキーとかいうやつだろう。
最初は敵かと思ったので俺は思わず身構えてしまったのだが、ヴァロムさん曰く、敵ではないそうだ。
しかも、そのドラキーは言葉も喋れるので、普通に会話も出来るのである。
まぁそれはさておき、俺はヴァロムさんに頷いた。
「ええ、覚えてますよ。それが何か?」
「あれは儂の家で、代々付き合いをしている魔物でな。遠方への連絡手段として用いておるのじゃよ」
話を聞く限りだと、どうやら、あのメイジドラキーは伝書鳩みたいなモノのようだ。
「遠方への連絡手段ですか。……という事は、ご家族から連絡があったのですね」
「うむ。息子からの」
「へぇ、息子さんからなのですか……。で、どんな連絡があったんですか?」
ヴァロムさんはそこで思案顔になると、少し間を空けてから話し始めた。
「……まぁ簡単に言えば、『王都へ急ぎ帰還せよ』というものじゃ」
ヴァロムさんは端的に言っているが、この雰囲気を察するに、俺には話せないような事もあったに違いない。
気にはなるが、あまり余計な詮索はしないでおこう。
今はそれよりも、肝心な部分を訊いておかねばなるまい。
「そうだったのですか。それじゃあ、俺も一緒に王都へ行くのですね?」
だが俺の予想に反して、ヴァロムさんは頭を振ったのである。
「いや、行くのは儂だけじゃ」
「え? という事は、俺は暫く、ここでお留守番て事ですか?」
「まぁ表向きはそうなるのじゃが……実はの……お主に頼みがあるのじゃよ」
「頼み?」
(珍しいな……俺に頼みごとなんて……。何なんだろう、一体?)
と、そこで、ヴァロムさんはラーの鏡をテーブルの上に置いた。
「儂が10日経っても帰って来なかったならば、ラーさんの指示に従って、お主に動いてもらいたいのじゃ」
「あのぉ……一体、どういう事なのですか。……王都で何かあるんですかね?」
「コータローよ……儂らは今、大きな流れの中におるのかもしれぬ。世の中を大きく変えるほどの大きな流れの中にの……」
「大きな流れですか……」
言ってる事が抽象的すぎてよく分からないが、ヴァロムさんは何かを始めるつもりなのかもしれない。
「そうじゃ、大きな流れじゃ。じゃが、今はそれ以上の事
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