第二章 御子の国イシュマリア
Lv13 新たな潮流
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ん。さっきソレス殿下が王家からお呼びがかかったといってたけど、それはヴァロムさんの事に関係してるのかい?」
アーシャさんは顔を俯かせると、元気なく言った。
「お父様の話では、八つの地方にいる八名の大神官と、八支族である太守全員に召集があったようなのです。そこから考えられるのは、恐らく……イシュマリアの血族とイシュラナに仕えし高位の神官が執り行う異端審問ですわ」
異端審問……中世ヨーロッパの歴史の記述で、よく見かける単語の1つである。
当時行われていた魔女狩りなんかも、これに含まれた気がする。
これらを踏まえたうえで、アーシャさんの今の様子を照らし合わせると、恐らく、意味合いはそれらとあまり変わりがないに違いない。
要するに、一方的な判決を下す宗教裁判ということだ。
「王家の侮辱と言ってたけど……もし異端審問ていうことならば、そんな簡単なものではなく、少し複雑な事情がありそうだね」
「ええ、恐らくは……」
さて、どうするべきか……。
ヴァロムさんは10日経っても帰って来なかったら、ラーのオッサンの指示に従えとは言っていた。
一応、明日が10日後だが、今の話が本当ならば、帰って来ないのは明白である。
(仕方ない……ラーのオッサンに訊いてみるか)
俺はラーの鏡を首から外し、テーブルの上に置いた。
「おい、ラーのオッサン……今の話を聞いていただろ。オッサンは何か知ってるのか?」
「我はヴァロム殿が何をしたのかは知らぬぞ」
「本当かよ? イデア神殿から帰ってきてから、ヴァロムさんとオッサンはいつも一緒だったじゃないか」
そう、オッサンとヴァロムさんは、いつも一緒にいたのだ。
なので、ヴァロムさんとよく話をしている筈なのだが、オッサンは尚も、否定を繰り返したのであった。
「そんな事言われても、知らぬものは知らぬわ」
どうやらこの口ぶりだと、本当に何も知らないようである。
仕方ない、とりあえず、話を進めよう。
「ところでアーシャさん、ソレス殿下はもう出かけたのですか?」
「いいえ、今日の昼に王都へ向かうと言ってましたわ」
「そうですか……で、アーシャさんはこれからどうするの?」
「……私も真相が知りたいので、お父様に付いて行こうかと思ってますわ。ところで、コータローさんはどうするつもりですの?」
「俺? 俺はヴァロムさんから頼まれている事があるので、それをしようかと思ってるよ」
するとアーシャさんは、怪訝な表情で訊いてきたのだ。
「頼まれている……。何ですの、それは?」
俺はそこで昨晩のやり取りを思い返した。
あの時ヴァロムさんは、『アーシャさんに言うな』とは言っていなかったのだ。
まぁ『言え』とも言ってなかったが……。
そんなわけで、俺は言っていいものかどうか、少し悩んだ
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