第一章 竜を探求する世界より、愛を込めて
Lv1 目覚めの地
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たことなど無いな」
ヴァロムさんはそう告げると頭を振った。
「そ、そうですか……」
俺はこの反応を見て、理解した。
それは、ここが俺の住んでいた世界ではないかもしれない事と、考えたくはないが、もしかすると、あのゲームの中にいるかもしれないという事をである。
ゲームの世界に現実の人間が生身で入り込む……そんな事があるのだろうか……。
いやその前にドラクエは、世界的に有名な大漫画家がキャラデザインした、アニメチックな2次元の絵柄の世界観だ。
こんな現実感あふれるリアルな風景は、あまりドラクエっぽくないのである。
俺はまた考える。ここは一体どこなんだと……。
この人が流暢な日本語を話しているので、意外とここは日本のどこかという可能性も捨てきれなかったが、今の言葉を聞いて余計にそれから遠ざかった気がした。
それに、ゲームの中に入るなんてことは、どう考えてもありえないし、考えたくもない事であった。
だが実際に俺は今、そんな世界にいるのだ。
またそう考えると共に、どんよりとした気分になってくるのである。
当然だ。帰りたくても帰り方が分からないからである。
「ハァ……」
俺は肩を落として俯き、大きくため息を吐いた。
そこでヴァロムさんの声が聞こえてくる。
「それはそうと、コータローよ。お主が、何故この地にいたのかは分からぬが、これから一体どうするつもりなのだ? このベルナ峡谷は、今のお主の装備で越せるほど、生易しいところではないぞ」
「こ、これからですか? これから……どうしよう……」
フェードアウトするかのように、俺は声が小さくなっていった。
「……ふむ。まぁ儂は見ての通り独り暮らしだ。帰れる目途が立つまで、暫くの間、お主もここに住むか?」
「え? い、いいんですか?」
「ああ、構わぬ。お主一人くらいなら、儂も面倒みてやれるからの。まぁそのかわりと言っては何だが、お主にも色々と仕事はしてもらうがな」
「あ、ありがとうございます」
先程の戦闘を見た感じだと、この人はかなり腕に覚えもありそうなので、これは渡りに船かもしれない。
もしここがドラクエの世界ならば、メラミを使えるという事を考えると、この人はそれなりにレベルの高い魔法使いの気がするのだ。
なので、いざという時に俺を守ってくれそうなのである。
それに今は色々と情報が欲しい。もしかすると、現実世界に帰る為の方法が、この世界にあるかもしれないからだ。
またそう考えると、少しだけ元気も出てきたのである。
とまぁそんなわけで、俺はここがあの世界なのかどうかを確認する為に、今一度訊いてみる事にしたのであった。
「ところでヴァロムさん。さっきリカントとかいう化け物を倒した時、メラミとか言ってましたけど、あれは魔法ですか?」
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