第一章 竜を探求する世界より、愛を込めて
Lv1 目覚めの地
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る。
問題はその後なのだ。
次に目が覚めたときは、この男に呼び起されていたのである。
その間の記憶というのが、すっぽりと抜けているのだ。
因みに、今の俺の服装はバイト帰りのままであった。
下は茶色のカーゴパンツとスニーカーで、上は黒い長袖のカットソーというラフな出で立ちである。
この状況を考えるに、電車に乗った時の状態で、俺がここに来ているのは疑いようのない事であった。
その為、電車で拉致されたのかとも一瞬思った。が、よく考えてみると、そんな感じではないのである。
なぜなら、カーゴパンツのポケットには携帯や財布といったものがちゃんとあるうえ、手足を紐やロープで縛られた跡というものも全く無かったからだ。
もし俺が拉致実行犯ならば、連絡手段や身体の自由を与えるような事は絶対しない。
拉致する以上、そこには監禁という状況が、長期的にせよ短期的にせよ必然的についてくるからだ。
特に引っ掛かったのは携帯である。
こんな外部との接触ツールをそのままにしておくだろうか?
いや、多くの場合、そんな危険なものは取り上げるに違いない。
そう考えると、今の状況が拉致とはあまり考えられないのである。
まぁとはいうものの、携帯はさっきからずっと圏外なので、あえて放っておいた可能性も否定できないが……。
それはさておき、訳が分からない……。
ああ……何でこんな事になったんだろう。
答えの見つからない疑問に頭を悩ませる中、俺はいつしか中央に置かれた四角い木製のテーブルに案内されていた。
男は言う。
「では、そこにある椅子に座ってくれ」
「はぁ……」
言われた通り、テーブルにある木製の椅子に腰かける。
俺が座ったところで、男は口を開いた。
「さて、ではまず自己紹介といくかの。儂はヴァロムという者だ。世俗を離れ、今はこのベルナの地で隠居生活を送っておる。まぁ俗にいう変わり者の爺といったところじゃ」
次は俺の番だ。
「じ、自分は三崎 光太郎と言います」
「ミサキコータロー? 変わった名だな」
この人の発音を聞く限り、姓と名の区切りが感じられない。
どうやら勘違いしてるようだ。一応言っておこう。
「あの、三崎が姓で光太郎が名前になります。なので光太郎とでも呼んで下さい」
「ン、家名を持っておるという事は、お主、貴族か?」
「は? いや、貴族じゃないですよ。ごく普通の家ですが……」
この人の言う貴族がどういう意味かよく分からなかったが、とりあえず、俺はそう答えておいた。
ヴァロムさんは少し怪訝な表情をしたが、すぐ元に戻り、質問を開始した。
「ふむ。……まぁよい。ところでお主、一体何があったのじゃ? あんなところで気を失っていたという事は、魔物にでも襲われたのか?」
「いや
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