第一章 竜を探求する世界より、愛を込めて
Lv1 目覚めの地
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は信じられないような光景だったのである。
なんと周囲には、グランドキャニオンを思わせるような、赤く高い岩山が連なる荒れ果てた大地が広がっていたのだ。
草木などは雀の涙程度で、殆ど生えていない。
あるのは岩や砂、そして大小さまざまな石ばかりなのであった。
「なッ、ここは……どこだ!?」
これを見た俺は、思わずそう口に出していた。
当然である。俺は日本の東京にいた筈だからだ。
こんな訳の分からない場所にいるなんてことは、絶対にあり得ないのである。
男は言う。
「ここはベルナ峡谷じゃ」
(はぁ、ベルナキョウコク? 何を言っているんだ、この男は……。いや、ちょ、ちょっと待て、ここは日本なのか……こんな場所が日本にあるなんて聞いたことないぞ。というか、何で俺はこんな所にいるんだ?)
止め処なくあふれ出る疑問に対して、俺は脳内で自問を繰り返しながら、ただ呆然と周囲の光景を眺めていた。
暫くすると、男がまた話しかけてくる。
「お主、気を失っていたようだが、一体何があったのだ? それに変わった服装をしておる。お主、一体どこの者だ? お主の顔立ちを見るとアマツの民に似ておるが……」
「は? アマツの民? 気を失っていた?」
この状況についていけないので、俺はそんな言葉しか出てこなかった。
「なんじゃ……それも覚えとらんのか。まぁよい。とりあえず、ここは危険だ。話は儂の住処で、ゆっくりと訊こう」
男はそう言うと、ある方角を指さした。
と、その時であった。
【ガルルルルルルッ!】
俺達の背後から、獣が威嚇するかのような、物々しい唸り声が聞こえてきたのである。
俺と男は背後に振り向く。
そして……俺は顎が外れるほど、驚愕したのであった。
【あわわ。ば、化け物……】
なんとそこには、狼男を思わせるような化け物が、1匹佇んでいたのである。
人間よりも一回り大きな体型だったので、俺は最初、熊かと思った。が、それにしては形や色が変であった。
特に頭は、熊というよりも、狼と言った方がしっくりくる造形なのだ。
全身は水色の毛に覆われており、人間の様に両足で立っていた。手足の指先からは恐ろしく鋭利な爪が伸びている。また、幾つもの牙が見え隠れする口の縁からは、瑞々しい涎が滴り落ちていたのである。
そしてこの化け物は今、まるで御馳走にありついたかのように舌舐めずりをしながら、俺達を赤い目で睨み付けているのであった。
(何だこの化け物は一体……作り物か? いや、それにしてはリアルすぎる。というか、何なんだよ、この展開は……)
身体を委縮させながら俺がそんな事を考えていると、男は溜息を吐きながら口を開いた。
「フゥ……早速、現れよったか。近くに、腹を空かせたリカントがいたとはの」
リカ
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