第一章
[2]次話
漱石よりも三島由紀夫
大国ゆきえは大学では日本の近現代文学特に夏目漱石を専攻している、研究対象としてはオーソドックスだ。
だがその夏目漱石についてだ、ゆきえの姉達は家で彼女に妹を入れて四人で教育番組を観つつそのゆきえに漱石のことを話した。
「小説家としては凄かったけれど」
「知識人としてもね」
「俳句や漢詩も残していて」
「凄い教養もあったのよね」
戦前、特に明治の知識人として見事な資質を備えていたというのだ。
「元々大学院まで行ったしね」
「東京帝国大学の」
今の東京大学である。
「イギリスに留学もしてるし」
「ロンドンの方にね」
「けれどね」
「人間としてはね」
「あっ、漱石って何か」
妹も言ってきた、四人共お菓子を食べてジュースを飲みつつテレビを観ながら気軽に話している。テレビでは漱石とは全く関係のない科学のことが話されている。
「性格よくなかったのよね」
「みたいよ、被害妄想強くてね」
「結構暗いところもあって」
「おっちょこちょいでね」
「癇癪持ちだったのよ」
姉達は末の妹にも漱石のことを話した。
「それで子供さんをステッキで殴りまくったりとか」
「そんなことしてたらしいのよ」
「今で言うDVね」
「そうしてたのよ」
「うわ、それ最悪じゃない」
その話を聞いてだ、末の妹はドン引きした顔になった。
「人間として」
「昔はそうした人多かったみたいだけれどね」
「家族に暴力振るう人」
「それでその中でもね」
「漱石は問題のある人だったみたいよ」
「何ていうか」
ここでまた言った末の妹だった。
「最低の人間ね」
「そう言っていいわね」
「聞いてる話だとね」
「文学的な評価はともかく」
「人間としてね」
「イメージ狂うわ。けれど」
ここでだ、末の妹は。
のどかな感じで好物の羊羹を食べながらテレビを観ている彼女から見て三番目の姉であるゆきえを見てだ、彼女に尋ねた。
「お姉ちゃん漱石研究してるわね」
「そうだけれど」
ゆきえは妹に穏やかな顔で答えた。
「面白いわよ」
「いや、面白いって」
妹はゆきえにこう返した。
「そうした人を調べていて」
「確かに困ったところがあるけれど」
漱石はとだ、ゆきえも研究しているだけにこう言えた。
「いいところもあるのよ」
「子供さんにそんな暴力振るう人が」
「そうなのよ」
「そうなの」
「いや、どうもね」
「結構以上によね」
姉達もここでまた言う。
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