第四話 覚悟を言葉に換え――
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よう。俺は弱い。弱いまま、あの鉄火場に飛び込んだ阿呆だ」
まずは認める。どれだけ言葉を繕おうが、あの場の状況が全てであり、真実である。そこに力を示せなかった時点で、もはや鳳に出せる言葉は無かった。
――しかし、それだけで終わらせるつもりもまた、無かった。
「だから俺は力が欲しい! 戦えるだけの……なんて贅沢を言うつもりはない。あの鉄火場に放り込まれてもなお、帰って来られるだけの力が!」
弦十郎と翼の目つきが変わる。二人の予想ではもうこれで終わり、鳳郷介は元の日常に帰っていくものだと、そう信じてやまなかった。……それなのに。
「……今のは聞き違いか、鳳君? 俺の耳では今、再びあの地獄に飛び込むと聞こえたようなのだが?」
「然り。俺はまたあの地獄に行くだけの理由がある」
「聞かせてもらえますか? 痛感してもなお、崩れ落ちぬその膝を奮い立たせられるその理由を」
シン――と、室内が静まり返った。皆待っているのだ、鳳の言葉を。ここから先は分岐点だということを何となく鳳は感じ取っていた。
だからこそ言葉を選ぶ――などという事は死んでも御免である。
「鎖を操っていた女の子に再び見えるために。俺は――」
一欠けらの躊躇なく、鳳はこの広い司令室全てに轟かさんばかりの声量で言ってのけた。
「――俺はあの子に恋をしたッッ!!!」
覚悟は示した、言葉は紡いだ。――なれば、この極寒の地に足を踏み入れたかのような沈黙は何なのだろうか。鳳は僅かに首を傾げる。
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