第四話 覚悟を言葉に換え――
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ノに見えてしまう。口ぶりは羽毛のように包み込んでくれるような安心感があれど、もしかしたらそれ自体が巧妙な罠で、これから臓器なりなんなりを取り出し、冷凍保存されるような状況に陥る……などという可能性も無きにしも非ず。
そんな鳳の懸念など露知らず、優男は扉の横に付いているリーダーにカードを走らせると、鋼鉄の扉が二つに分かれていく。徐々に開かれ、光が差していく。
少しばかり鳳は目を細めた後、すぐに開眼し、目の前の光景に備えた。臆すれば足元を掬われる、前に出過ぎても足元を掬われる――なれば、ただ平静を保ち、これからの出来事への準備に充てた方がまるで良い。
「さあどうぞ。司令がお待ちです」
「……司令」
優男に促されるまま、鳳は足を進める。そこはまるで宇宙センターのオペレーティングルームを彷彿とさせるような設備がずらりと並んでいた。否、もしかするとそれ以上なのかもしれない。
「司令、お連れしました」
「ご苦労だったな」
声のする方を見上げると、そこにはまるで巌のような大男が立っていた。
雄々しい獅子を彷彿とさせるような逆立った髪の毛、分厚い鉛のような筋肉を覆い隠すは赤のカッターシャツとピンクのネクタイ。腕を組み直立不動の姿勢を貫いてもなお隠し切れない圧倒的な功夫。
素直に言おう。鳳は気圧されてしまっていた。ほんの僅かに視線を交わしただけでその存在感を刻まれてしまったのだ。
「君が鳳郷介君か?」
「ああそうだ。俺が鳳だ。それで、あんたは?」
第三者の目から見て、鳳の発言は些か無礼極まり無いもので。彼の些細な抵抗、と言えば聞こえは良いが、それでも即座に何らかの実力行使をされても、何も言えないレベルのモノである。
そんな彼の無礼を、大男は笑って飛ばす。
「俺は風鳴弦十郎。簡単に言うと……ふむ、そうだな」
そして弦十郎は鳳にとってあまりにも衝撃的なことを口走った。
「君が私立リディアン音楽院で働けるように根回しをした男――とでも言えば全てを理解してくれるかね?」
「っ!? あんたが……“良いおっさん”!?」
咄嗟にいつも心の中で呼称していた名前で弦十郎を呼んでしまった。流石にこれはあまりにも口を滑らせてしまったと、鳳は慌てて口を塞ぐも、時すでに遅し。
器のデカさは天下一品である風鳴弦十郎の笑いの種と昇華されてしまっていた。
「はっはっはっ! 俺も面白い名前で呼ばれていたもんだな! ああ、良いとも! 君の呼びやすい呼び方で呼んでくれたまえ!」
「どういう神経してんだよ。普通怒るのが筋だろう」
「良いや。その程度で怒るなら俺は大人を名乗れやしないさ」
思わず頭を抱えてしまった。どうやらこの風鳴弦十郎という男は自分の物差しでは測り切れない
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