第三話 伊豆、到着
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引く感覚を覚えながらもライカは今の状況を整理する。背中に流れる冷や汗を感じつつ、彼女は姿勢を正し、答えた。
「……数々の御無礼、お許しください。……メイシール少佐」
「よろしい。さて、それじゃあ司令室に行くわよライカ」
敬礼を解いたライカはつい疑問の声を上げてしまった。
「……何故少佐も?」
「何でって……貴女は私の部下になるからよ。やっぱり上司も行かなきゃ駄目じゃない?」
つい立ち眩みを起こしそうになったライカは、もっとカルシウムを採らなくてはと小さな決意をした。
◆ ◆ ◆
「入れ」
「失礼します」
ライカは机に座ってこちらを見据えている人物へ敬礼をする。地球連邦軍・極東方面軍司令官でありながらここ伊豆基地の司令である『レイカー・ランドルフ』を前に、ライカは多少の緊張を感じていた。
「本日付で配属となりましたライカ・ミヤシロ中尉です。よろしくお願いします」
「歓迎しよう。……早速だが、報告書は読ませてもらった。説明をしてもらおうか」
前もって書いておいたのが役に立ったと内心安堵しつつ、ライカは説明をする。
「私見ですが、自分は『ノイエDC』の残党ではないかと考えます」
「中尉。私は中尉の口からもう一つの可能性を聞きたいのだが?」
底冷えのするような視線がライカを射抜く。そうか、とライカはあっさりと理解した。
――自分は今、レイカーに試されているのだと。
「……あの時奴らは積み荷を寄越せと言っていました。大事なモノだと確信してあの発言だったのなら、敵はただのテロ屋でも強盗でもないと、そう考えています。それが何かは分かりませんが。……しかし、機体から察するに恐らくイスルギ重工からバックアップを受けているのは確実かと」
「毒にも薬にもなる、というのはあそこのことを言うのだろうな。……ライカ中尉。今回の件だが、もう一つ気になることがある」
ついに来たか、とライカは腹を括る。不備がない報告書というのはつまり、自分のやったことが全てさらけ出されているということだ。
「何故最後の一機を撃墜した?」
「……それは」
「私から説明しますわ」
今まで後ろで黙っていたメイシールが前に出てきた。
「彼女の意思で落としたのではありません。私の『CeAFoS』が敵機を撃墜しました」
「『CeAFoS』だと? あれはまだ使えるレベルではないと聞いていたのだが」
「はい。ですから北欧から返してもらって調整をしたかったのですが、その前に今回の件が起きてしまいました」
レイカーの鋭い眼光がメイシールを捉える。お互い、軽く視線を交わしたのち、先に引いたのはレイカーだった。
「……そうか、後で最新の報告書を私の所に提出してもらおうか」
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