第三話 嵐の中に少年は立ち
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言いつつ、クリスは装者三人への銃撃の手を止めず、なおかつ後ろで明らかに“鈍さ”を見せている響を気にしていた。
多勢に無勢とはまさにこのことであった。あまつさえこちらには一人足手まといがいる。気にしている訳ではなかった。しかしこれは矛盾だが、それでも気になるものは気になる。
「どーするよ? このままじゃジリ貧もジリ貧。大貧民生活が待ってるぜ」
そんな状況に、響が声を絞り出す。
「私は、困ってる皆を助けたいだけで……だから……」
「それこそが偽善」
調は続ける。怨嗟を込め、この目の前でご高説を垂れる偽善者の甘ったるい思考全てを刈り払うために。
「痛みを知らない貴方に、誰かの為にだなんて言って欲しくないッ!!」
――γ式 卍火車。
ツインテール部分をアームとして扱い、両の巨大鋸を投擲する。単純明快、故に強力。防御をしようと思う事すら許さぬ鋭撃が真っ直ぐに響へと襲い掛かるも、即座にクリスと翼がそれらを迎撃する。
「あれを容易く……」
一連の出来事を見守っていた凪琴は思わず目を見開いた。鏖鋸・シュルシャガナの無限刃から為せる攻撃は防御不可能。そう思っていた。だが哀しいかな敵はその一枚を超えている。
本腰を入れるべきか、そう思っていると耳元にナスターシャ教授から通信が入った。
『凪琴、現状は?』
「槍と剣と弓がなかなかどうして良くやる……。私はともかく、マリア達は鎮火しますよこのままでは」
『ならば惑うてる場合ではありませんね』
決断が早いと言えば良いのか、最初から“そのつもり”だったのか。ナスターシャ教授が自分を含め、マリア達に告げた一言それは――最終手段。
突如ステージ中央から放たれる碧の閃光。それが止むのと同時に現れたのは巨大なノイズ。マリア達は驚いているようだったが、自分だけは事前に聞いていた事である。理由は様々あるが、とにもかくにも。この『増殖分裂タイプ』が出て来た時点で自分達の撤退は確定した。
離れようとする凪琴はふと立ち止まり、ソレを見て、自分でも驚くくらいに拳を握っていた。沸々と湧き出る感情。言葉へと代えるには軽すぎて、感情に付加するには重すぎる。
マリアが一早く状況を飲み込み、両籠手のパーツを組み合わせ、槍を携えた。そのまま穂先を『増殖分裂タイプ』へと向け、放つはエネルギー砲撃。
――HORIZON†SPEAR。
ノイズへ直撃したのを見届け、マリア達はこの波乱のライブ会場を脱出した。
(え……)
マリアに続き、この場を後にしようとした凪琴は上空へと意識を向ける。そこには先ほどのノイズの“破片”が会場の
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