第三話 嵐の中に少年は立ち
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はいない。きっとこの直感は大きく外れてもいないだろうという確信が彼の中にはあった。だったら今彼女達はまたしても過酷な運命に飛び込むということと同義。彼は黙して無事を祈ることとした。それが今できる最大限の事である。
幸い、今しがた別の任務帰りからそのままライブ会場に向かっていた響とクリスが現場に到着し、ヘリを降下した。これで人数的にはイーブン。ただ翼が嬲られるだけの時間は終わった。
そんな彼の僅かな願いを嗤うかのように、警報が鳴り響いた。同時に端末へ流れ込んでくる情報。即座に解析し終えると、彼は驚愕にその顔を歪ませる。
「どうした!?」
「司令! 新たなアウフヴァッヘン波形を検知! しかも特機部二のデータベースに該当有り! モニター、出ます!!」
言葉が早いか手が早いか、言い終える前に藤尭はソレをモニターに表示させた。そこにはこう表記されていた。
ソレは、かつて主神を喰らった終末の魔狼を縛りし貪鎖。その名は――。
「『グレイブニル』だとぉッ!?」
――第十六号聖遺物『GLEIVNIR』。
聖遺物一つ一つに存在する固有のエネルギー波形パターンである『アウフヴァッヘン波形』からパターンを照合し、確かにそう導き出したのだ。
新たに出現したイレギュラー。その感知地点が弦十郎の表情を更に険しくさせる。何を隠そうその地点とは――。
「鉄火場となっているあのライブ会場に現れるか……ッ!!」
翼達が今事態の収拾に当たっているあの会場であった。
◆ ◆ ◆
「――『“昨日”を振り向いても私はなく』」
灰色の鎧を纏った少女が両の籠手から伸びる鎖を掴み、横一文字に振るうとノイズの一体が真っ二つに裂かれた。目にも留まらぬ早業に鳳は呆然とし、だが歌に聴き入る。苛烈さと切なさがひしひしと伝わってくる、そんな歌であった。
鎖を引く間もなく、二体のノイズが彼女を無に返さんと襲い掛かる。その速度は瞬きをしていたらあっという間にその身を炭素と昇華させられいてもおかしくはない。
「『“明日”を向いても私はなく』」
空中に身を翻し、少女が後方にいたノイズに狙いを定め、自らの両手を一つに合わせた。
両籠手から伸びた無数の鎖が螺旋を描き、一条の弾丸となる。そう、これこそが少女の歌が紡ぎし絶技の一つ。
――打ち砕く月曜。
数瞬で着弾した鎖の弾丸は正確にノイズを捉え、その身を塵へと還す。小規模ながらクレーターが出来るほどの威力に鳳は思わず息を呑むが、その張本人はそれほど気にしていないようで、それどころか会場の方へと素早く視線を送る。ノイズなぞ歯牙にもかけていなかった。
「……気づかれ
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