67.確かにそこにいた人々へ
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れはきっと、オーネストにとっての何らかの決別だったのだろう。
二柱の神と俺の見守る中、立ち上がったオーネストは静かに目を閉じる。
「オーネスト・ライアーとしてではなく――テティス・ファミリアの最期の生き残りである『アキレウス・スクワイヤ』として………さよなら、みんな」
そう言い終えて一瞬墓を見たオーネストの顔が、10歳前後の幼い子供が今生の別れを告げる顔と重なって見えた気がした。
= =
不意に、頭を上げる。敷地内に聞き覚えのある足音の鳴り方が二つ、近づいてくる。
きっと自分が猫だったら、ぴんと尻尾を伸ばし、耳をピョコピョコ動かしてるだろう。そんな事を考えながら、延々と続けていた編み物を放り出して玄関に走る。待ちすぎて長くなりすぎた編み物を避けながら、待ちきれずに走る。いつも待ち望んでいて、ずっと幸せで、幸せ過ぎてそのち零れ落ちてしまうのではないかと思う程に恋焦がれた、大切な二人。
「………お帰りなさいませ、クソ野郎共っ!!」
二人は、どこか雰囲気が違っていて、でも確かに自分の好きな――メリージアの愛する二人だった。
「ただいまー!いやー今回は苦戦したねぇ!」
からっとした笑顔で軽快に笑うアズライール・チェンバレットの笑顔が心に染み渡り、幸福感に包まれる。何も考えていないようで、しかしいつも優しく、メリージアが近くにいれば笑って抱きとめてくれるアズが、メリージアはどこまでも好きだった。
そしてもう一人――決してアズのように優しい態度は見せないのに、本当は誰よりも優しさを知っていて、素直じゃないからこちらのあいさつにもぶっきらぼうに「ああ」と言うだけの――。
「……ただいま」
「!?」
――それは初めての返事で、余りにも唐突で。
更に続く言葉と普段のオーネスト・ライアーならば絶対にやらないと断言できる行動に、メリージアの幸福度が爆発した。
「目の下に隈が出来てるな。心配かけて悪かった」
オーネストが控えめに、そして割れ物を触るように優しく、メリージアの体を抱きしめた。
(えええええええええええええええええええええええええええええ!?ええ、えええええええええええええええええええ!?何!?アタシもしかして夢見ちゃってる!?幸せ過ぎるからこその夢オチ!?いやでも、お、オーネスト様の手が!いや全身から伝わるぬくもりや匂いが!!ち、近いぃぃぃぃっ!!ああっ、オーネスト様の頬とアタシの頬が重なってぇ、アタシの頬なんか汚ねぇから触っちゃダメっつーかかハグしてくれるなら一度フロで体を清めさせてってそうじゃなくてああああああああああああああああああ!!だめぇ、そんなズルい!不意打ちズルい!だってこんなの嬉しいに決まってやがるのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!
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