67.確かにそこにいた人々へ
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テティス・ファミリア。そのファミリアの名前を、俺は幾度か聞いたことがある。例えば――そう、オーネストと俺が住んでいるあの館の以前の所有者として、とか。他にもたまに屋敷の中で、会話の断片で、隠すようにその名を聞いた事があった。それに対してそれとなく想像することもあった。それでも、別段オーネストに詳しく聞く事はしてこなかった。
「俺は、このファミリアの中で生を受けた」
それは、オーネスト・ライアーがオーネスト・ライアーになる前の記憶だった。
「団長のアキラ・スクワイヤと、その恋人だった女性、その間に俺は生まれた。生まれてすぐに生みの親は容体が悪化して死に、俺は主神テティスに名前を与えられ、彼女とそのファミリアに育てられた」
「母親さんの、名前は?」
「――分からない。彼女はファミリアの人間じゃなかったし、その詳細は付き合ってた団長と主神テティスしか知らなかったそうだ。ルッティと呼ばれてたが、本名かどうかも不明。魔法使いだったらしいが、顔写真も残ってないんじゃ顔なんぞ分からんわな。遺品の杖をヘファイストスに調べてもらったが、出た結論は『製造方法不明』だった」
「神に理解出来なかった以上、恐らくは根底の根底から人間によって創造された技術体系なのでしょうね。分かるのはそこまでだったわ」
ファイさんの注釈を聞きながら、俺はふと思い出すものがあった。
「アプサラスの酒場でガンダールからかっぱらったあの杖か?」
「そうだ。ファミリア壊滅のどさくさであそこに流れ込んでたのを、興味本位でな」
「……アキ、生みの親の事を知りたいと思うのは興味本位ではなく人として当然の事よ」
「そうは言うがヘファイストス、俺を専ら育てたのは、物心ついた頃から面倒を見てくれたテティスだ。あの人が俺の母親だよ」
自分にとっての母親だと断言するその想いは強いだろう。オーネストは真顔でそう言い切った。否定は出来ないのか、ファイさんも静かに目を閉じて引き下がる。オーネストはそのまま話を続けた。
「俺はファミリアの事は好きだったし、親父だって頼れる男だと思っていた。だが、俺の気付かない何処かでこの街はおかしくなっていっていたんだろう。その頃の俺にはそれに気付くだけの洞察力と経験がなかった。リージュも、そしてロイマンもな」
「リージュちゃんとはその頃から友達だったんだってのは分かるけど、何故そこでロイマンさんが?」
「あの頃まだ出世してなかったロイマンは、俺たちの遊び場の近くに住んでたんだ。半ば無理矢理遊びに付き合わせてたから、当人はさぞ迷惑だったろうな」
オーネストが可笑しそうにほんの僅かな笑みを浮かべる。きっと子供特有の人懐っこさと強引さに逆らえなかったんだろう。そんなロイマンさんも今やギルドのトップである。そして確か、彼がトップ
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