第62話<艦娘の剛と柔>
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ら嫌いだが……」
「ボッタクリって何?」
「そこの可愛いお姉ちゃん、金魚すくいしない?」
私が呟く側から早くも五月雨と寛代は屋台の売り子に捕まっていた。
「うふふ、この子達には間に合っているわよ」
「そうじゃ、この子等は雷のような魚(魚雷)も持って居るしな」
直ぐに利根や龍田さんが適当にあしらいながら引き離してくれた。
「はぁ?」
この二人にかかると縁日の売り子もタジタジだな。
そんな祭りの喧騒の中で私はフッと彼女たちから離れて、浴衣姿で散策する少女たちをボンヤリと眺めていた。
「なるほど」
艦娘とはいえ浴衣を着た彼女たちは屋台通りに自然に溶け込んでいた。
それは浴衣の効果なのか、それとも彼女たちが元々持っている『和』という気配なのか、いずれなのかは正直分からない。
ただ彼女たちを批判する輩がよく言う『艦娘は単なる機械』という表現は明らかに間違っていると感じる。
墓参にしても最初は違和感を感じたのだが、いざ現地へ赴いたときの彼女たちの現場に溶け込む雰囲気。
それは、うまく言葉にできないが意外なほど日本の伝統文化には馴染むのだ。あの奇抜な戦闘服ですら、そうあるべきと思わせるモノがある。
(不思議なものだ……艦娘か)
「テートク! 遅いね」
場をわきまえない金剛の叫びが響いて思わず赤面する。おい街角で『テートク』はやめろって。
水木しげるロードから駅前へと入る大通りのは、お盆前に私たちが軍用車で敵襲を受けた通りだった。そこに面した民家には軒並みブルーシートが覆われていて、なぜか多少とも気が引けた。
そんな私の気配を察したのか青葉が言う。
「気になりますか?」
私は頷いた。
「……まぁ、海軍の責任では、ないんだけどな」
「……」
フィルムを巻きながら彼女は苦笑していた。いつもは、おちゃらけて居る彼女も意外に繊細な面があるよな。
西の空の日は、もうかなり暮れてきた。屋台の灯かりが黄色く輝き、艦娘たちのカラフルな浴衣と絶妙な調和を見せている。
始めのうちは一緒に行動するようなことを言っていた艦娘たちも気がつけば好き勝手に屋台やお店を覗いたり各々グループ化して散らばって行った。
「まあ、そんなもんだな」
私は呟く。
とはいえ私自身は背格好の小さい五月雨や寛代に変な連中が声をかけないか心配で保護者のようにくっついて動かざるを得ないし。
ふと見れば日向と利根は射的の屋台を荒らしている……当然、百発百中だから。
思わず声をかける。
「ダメだよ日向、お店の人を困らせたら」
「いえ、やる時はやります」
ホントに日向は何をするのも生真面目だよな。まあ、そこがお前らしさだけど。
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