暁 〜小説投稿サイト〜
歌集「春雪花」
354

[8]前話 [2]次話



 これ見よか

  風に揺らるる

   若すすき

 人も知らじな

    文も絶へなむ



 この風景…彼もこんな風景を見ているだろうか…?

 咽せるような夏の風に靡く、未だ若い芒の葉…。
 真夏のどこにでもある風景…。

 いや…こんな田舎の風景を、彼は気にも止めていないだろう…。

 そんなことさえ、今の私にはもう分かりようもないのだが…。


 便りさえ…もう絶えて久しい私には…。



 青き田の

  光揺らぎて

    水面にそ

 帰らぬ里に

    君ぞ想いし



 真夏の強い陽射しに映える稲の葉…眺めれば、田の水面に陽射しが乱反射している…。

 私の田舎でも毎年見ていた…いや、見馴れ過ぎて当たり前だった光景…。

 もう帰ることのない田舎の風景が眼前の光景と重なり…無性に寂しくなってくる…。

 そんな田舎の風景…彼といた時間が頭を過り、深く溜め息をつく…。

 彼に私は価値がない…ただ、それだけのことなのだ…。


 それだけが、今の私そのものの意味なのだ…。


 ただただ…日々が辛い…。




[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ