第二話 踏み込み始めた“非日常”
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ウロしていて良い状況じゃないんだ。――そこの黒髪ツインテール、お前もだ」
鳳の視線が金髪の少女の傍にいた黒髪の少女へと向けられる。このコンビが一体どこから来たのか、それを問いたい気持ちもあったのだが、それよりも前に優先するべきモノがある。
……そんな鳳の考えに気付いたのか、黒髪の少女の眼が鋭くなった。
「……私達にはやらなくてはならないことがある。この場から退くなんてあり得ない」
そう言いながら、黒髪の少女はおもむろに手を当てる。その動作に既視感を覚えた刹那、金髪の少女が彼女の手を握り締めた。
「駄目デスよ調! こんな奴にソレを振るう道理はないデスよ!」
「……切ちゃん。でも、ここで時間を喰われる訳には……」
「おい調に切」
「気安く名前で呼ぶな! それにアタシは暁切歌デス! 切なんて名前じゃないデスよ!」
そう言いながら少女――暁切歌は鳳に対し、親指を立てた後、下に向ける。
やられるのはどうでも良かった。だが、鳳が見過ごせないことがたった一つだけ。
(何だよこの“敵意”。見たところ中学生辺りか……? そんな奴が出して良いモンじゃあない)
一体どんな境遇ならこれほどまでに憎々し気に人を見ることが出来るのだと、鳳は本気で戦慄した。なればこそ、だからこそ。ここで放っておくわけにはいかないのだ。
「分かった。なら切歌に調。何度も言うがここは危険なんだ。さっさと出る――」
瞬間、大きな衝撃が会場を揺るがした。不意の出来事につい体勢を崩してしまう鳳。耐えきれず壁に手をつくとほぼ同時、切歌と調が鳳から背を向ける。
「……急ごう切ちゃん。マリアが危ない」
「合点デス! マリアにはアタシ達がいなくちゃ駄目デスからね!」
「あ、おい待て! 今マリアと言ったな!?」
決して聞き間違えるはずのない名。それはこの騒動の首魁の名である。思った以上に二人の脚が早く、あっという間に姿を消されてしまった。
だがそこで終わったりはしない。すぐに鳳は二人が消えた方向へと走る。先ほどの発言に嘘がないのなら、彼女達が行くところにマリアはいる。更に言うのなら、このルートはライブ会場への正規ルートでもあった。
進むたびに大きくなっていく音。金属らしき何かが打ち合う音、爆ぜる音、様々な音。もはや疑う余地はない。
間違いなく“何か”が起こっているのだ。鳳ごときの思考を遥かに凌駕する何かが。本当に行って良いのか。自分はこの道を真っ直ぐに進んで良いのか。
――行けばもう二度とは“今まで”通りには生活することは出来ないような気がして。
「……なんて思うのならハナからこの脚は前へと進んじゃいない」
独り言つ。己
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ