第一話 亡霊が泣く〜前編〜
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を私に見せる理由は何ですか?」
「好きと聞いていたが?」
「……そういうことではなく、なんで“これ”のカスタム機があるんですか? しかも、仕様的に『ハロウィン・プラン』と何ら関係がないように思えますし」
「私もそう伊豆にいる“これ”の産みの親に質問したが、『部外秘』の一点張りでね。その割にはこちらの方に送り付けてきて、テストしてくれだのと言っていることが無茶苦茶だ」
ラインハルトの声に疲れの色が見えた。恐らく初めてではないのだろう。ライカの疑問を感じ取ったのか、ラインハルトが言葉を続ける。
「彼女と私は遠い親戚でね。贔屓、とまではいかないが一応それなりの便宜を図ってやってはいたのだが……」
「何か問題が?」
「これが想像以上のじゃじゃ馬でね。乗りこなせるテストパイロットがいないのだよ。しかもPT乗りも数少ないときた。つい先日、送り返すことが決まったと、そういうことだ」
非常に嘆かわしい。ライカは顔も知らないパイロット達に腹立たしさを覚えた。いくら数が整えられ、量産性もコスト面も全て越えているからといって、もはやPT乗りが、そもそもAMしか乗らない者が多くなっているとは。
「それで、だ。中尉、君にはこれの移送任務を命じたい」
「任務なら断る理由はありません。しかし、よろしいのですか? まがりなりにも機密なんですよね?」
「だからこそ中尉に命じている。あの“棺桶部隊”に籍を置いていた君にね」
その単語が出された刹那、ライカの表情が険しくなる。
「どこでそれを……」
「人の口に戸は立てられぬよ。電子の海ならばなお、だ。それに言い方は悪いが、いくら延命措置のプランが立てられていると言っても旧式は旧式。万が一鹵獲されても戦線に投入されるようなこともないだろう」
「……早いほうが良いでしょう。それでは……失礼します」
否定の言葉を飲み込むライカ。現場にいない人間と話をしていても、時間の無駄だと判断したからだ。
すっと立ち上がり、ライカは出入口まで歩いたところで立ち止まる。
「司令、先ほど貴方は、私はあの機体が好きだと仰いましたよね?」
「そうだが?」
「それは訂正して頂きたい」
「ほう」
ラインハルトに背を向けていたので表情は分からなかったが、間違いなく笑っていただろう。そんなことを考えながら、ライカはずっと訂正してもらいたかったことを言う。
「私はあの機体を“愛して”います。そこだけは間違えないで頂きたい」
「……覚えておこう。輸送機は第二格納庫にある。それで行くと良い」
「……お世話になりました」
交わす言葉も、時間も短かった。そこまで口数が多い方ではないのだが、不思議とラインハルトの前では、それで良いと思える。
こんなものだ、
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