掛罠
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精たちの世界《ALO》。大地を失っても飛翔すればいいだけの話で、事実、敵プレイヤーたちも驚愕しながらも翼を展開して滞空している。対する俺たちは翼を展開することはなく、あえてそのまま自由落下に身を任せることで、イグドラシル・シティへと急行していく。
「ありがと、ショウキくん。久々に遊べて嬉しかったぁ……!」
――そうして逃げる俺が最後に見たものは、狂喜の笑みを浮かべたリーベの姿だった。
「……追って来ないみたいね……」
「っ……キリト、助かった。だけど、どうしたんだ?」
そうして敵プレイヤーたちを撒いた後に《イグドラシル・シティ》のリズベット武具店近くまで飛翔してきた俺たちは、リーベやデジタルドラッグを服用したプレイヤーたちの尾行がないことを確認しながら、殿を務めていたキリトを最後にひとまず街に着地した。まるでマラソンをした後のような不愉快な疲労感に一息すると、助けてくれたキリトに対して向き直った。
「……死銃事件のことならって、私が呼んでたのよ。間に合うか難しいところだったから、言わなかったけどね……」
「シノン……」
「……ごめんなさい。少し、休むわ」
リズに抱き抱えられていたシノンが一人で立ち上がったものの、やはりその顔色はどうしようもなく悪く。心配そうなリズの言葉に手振りで応じながら、こちらの了承の言葉も待たずにログアウトしていき、シノンのアバターがこの世界から消えていった。
「シノン……そっちこそ、何があったんだ。ショウキ」
「デジタルドラッグ……って知ってるか?」
「あ、ああ……」
ならば話は早いと、リズベット武具店に歩いていきながら、キリトが来るまでのことを話していく。リーベのこと、デジタルドラッグを服用したプレイヤーのこと、そして――そのデジタルドラッグに仕組まれた、俺たちへの悪辣なトラップのこと。服用者のHPを全損させると、かつて人間を殺した感覚が手の中に甦り、強制的に脳裏にトラウマを想記させる。たまたま俺が、トラウマを無理やり記憶の中に封じ込めて覚えていなかったため、殺した感覚の再現による吐き気だけで済んだものの、シノンは――
「人を殺す感覚……か」
「……キリトも、気をつけてくれ」
――アレはプレイヤーの反応速度を上げるためのツールなどではない。リーベが仕組んだ、俺たちに対しての『罠』だ。 ……話が終わり、俺とシノンの状態に得心がいったのか、キリトが強く拳を握って何かを考え込む。
「ショウキは、大丈夫なわけ?」
「大丈夫……ではないから、店でちょっと休ませながら考えさせてもらう」
「考える?」
「……デジタルドラッグのことか?」
心配そうに語りかけてくるリズには悪いが、キリトの問いに小さく頷いた。
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