掛罠
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いというのは、俺のように自らの記憶に蓋をしたような奴にも有効らしいが、ならばシノンには――
「シノンちゃんにはちょっと不満かな? なんて言っても、撃ち殺したのがさ、本物の――」
――リーベの言葉が最後まで発せられることはなく。放たれたクナイが頬を掠めるとともに、口を閉じる代わりにリーベの口角が上がっていく。本来ならば、そのよく喋る口に直接ぶち込む軌道を狙っていたのだが。
「……少し黙れ」
「はーい、ショウキくんの頼みなら。だけどさ、ウチが喋るの止めたら……いいね?」
キリトとアスナしか知らないはずの、シノンの秘密を口にされるのだけは阻止したが、その代償としては。リーベがわざとらしく口に指を置くと、ずっと待機していた敵プレイヤーたちが動きだした。それはまるで訓練された猟犬のようで……いや、実際にデジタルドラッグという餌でリーベに釣られた、犬も同然なのだろうが。
「リズ! シノンを頼む!」
「どうすんのよ!」
「……逃げるんだよ!」
吐き気を圧し殺して立ち上がると、日本刀《銀ノ月》を鞘にしまいながら宣言する。リーベを目の前にして逃げるのは癪だが、今はもはや戦えるタイミングではないと。まだ身動きのとれないシノンをリズに頼み魔法の詠唱を開始するが、生き残った敵プレイヤーたちも逃すまいと攻勢をかけてくる。
「大丈夫か!」
「キリト! ……ごめん、殿を頼むわ!」
しかしそんな俺たちと敵プレイヤーの間に、黒い疾風のように一人のプレイヤーが降り立った。リズの言葉と戦況から何を狙っているのかが分かったのか、そのプレイヤー――キリトは、牽制するように《聖剣エクスキャリバー》を構えて。
「いくぞ!」
どうしてここに来たかは分からないが、とにかくこのタイミングで来てくれたキリトは、もはや天の助けも同義だった。理由は後にするとして、キリトが稼いでくれた時間でリズがシノンを助けるとともに、俺も魔法の詠唱を完了する。さらに日本刀《銀ノ月》に風の属性を付与するアタッチメントを装着し、その柄を握って息を強く吐いて。
「……セイッ!」
渾身の抜刀術。さらに風魔法にアタッチメントにより疾風を加えたそれは、カマイタチを生じさせて万物を斬り裂く刃と化した。ただし斬り裂くのはリーベや敵プレイヤーではなく、俺たちが立っていた浮島の大地だった。
「あぁ!?」
先程、日本刀《銀ノ月》を地面に突き刺し杖代わりにした時に、破壊不可オブジェクトではないことは確認していた……ならば、斬れない道理はなく。大地は両断されるとともにその耐久値は全損し、ポリゴン片と化してこの世界から消え失せ、俺たちは立つべき大地を失っていた。
「……デートの続きはまた今度、かぁ。でもね」
とはいえここは妖
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