掛罠
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
身体を蝕む電撃による麻痺からも解放されておらず、すっかり逆上してHPを回復することもせず、そのままリズへと斬りかかってきた。
「このっ……!」
本来ならば、麻痺をした瀕死の軽装プレイヤーなどリズの敵ではない。しかしてリズは倒れ伏したも同然の俺を守るために、その場を動かず防戦の構えを取ったために、振るわれたメイスは軽々と裂けられ、純白のエプロンドレスをダガーが抉る。
「っ!」
「リズ! 下がって!」
残る一人の敵プレイヤーを足止めしていたシノンが、こちらの危機に振り向きソードスキルを伴った矢を放つ。弓矢のソードスキルの中で最も高速を誇る一撃であり、リズと対峙するスプリガンからは見えない場所からの狙撃と、動きが鈍った敵には避けられるわけもない。
「シノン! 撃つな!」
「えっ――」
ただしシノンらしい正確無比な一撃が仇となって、俺の警告も間に合うことはなく。シノンの狙い通り、リズを掠めてスプリガンにのみ矢は直撃すると、そのままポリゴン片と化していく。先のサラマンダーの時と同様に、この世のものとは思えぬ絶叫をこの世界に残しながら。
「あ……」
その狂気の叫びを聞きながら、シノンは呆然とした様子で弓矢を取り落とす。その瞳はどこか遠くを見ていて、まるで耐えられないほど寒いかのように、自らの肩を抱いて座りこんでしまう。
「あ、嫌……ちが……嫌!」
「シノンまで……どうしたってのよ!」
「人を殺したんだよ」
普段の様子が嘘のように錯乱するシノンに、俺たちに何が起こったか状況がわからないリズが叫ぶと、リーベが静かに語りだした。恐らくは俺の予想と同様の、彼女が仕掛けていた最大級の罠のことを。
「殺した……? このALOでなに言ってんの!」
「うん。正確には殺した感覚、ってところかな。人を殺した時のね、カ、ン、カ、ク!」
「ッ……!」
……リーベがあのプレイヤーたちに使わせたデジタルドラッグに仕込まれた、VRでの痛みを実際のものとする機能《ペイン・アブソーバー》。使用者にとってデメリットにしかならないソレが仕込まれた理由は、VR空間で死んだ感覚を……つまり、俺たちにとっては人を殺した感覚を再現させるために他ならない。苦悶に浮かぶ表情と死にたくないとばかりの絶叫、そして腕にこびりつく独特の感覚。
――それは確かに、あの浮遊城で味わった感覚と同じもので。
「この機能にいっちばん苦労したんだけど、感想をくれないかな? あ、でも、本当に人を殺したような殺人鬼にしか本領を発揮しないんだよねー」
感想とやらは、吐き気に襲われる俺と、自らの肩を抱いて呆然とするシノンを見て満足したのか、リーベは唐突に話題を変えていた。人を殺した相手にしか効果を発揮しな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ