掛罠
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「このっ!」
リズの拘束を無理やり解いたサラマンダーが、翼を展開して逃げようと動きを止めた一瞬に、一足跳びで近づいてその翼を根本から斬り裂いて。空を飛べなくなったサラマンダーが大地に落下するとともに、こちらへ大剣を振るおうとするものの、そこを側面からリズのメイスが無理やり叩きつけられ、武骨な大剣が浮島に転がっていく。
「トドメだ!」
魔法を唱える隙も新たな武器を取り出す隙も、とにかく倒れ伏したサラマンダーに体勢を整える隙を与えるつもりはない。装甲がない首もとに容赦なく日本刀《銀ノ月》を振り下ろすと、急所たる首に突き立てられたことで、サラマンダーのHPがみるみるうちに消えていく。とはいえ敵は典型的な重装甲かつ高火力なプレイヤーであり、倒すまでになんらかの抵抗はしてくるだろう――とは思っていたが。
「ガァァァァァァァァァッ!」
中空に響き渡る獣のような悲鳴。あまりにも人間離れしていたために、それがサラマンダーから発生しているものだと気づくのに、目の前にいるにもかかわらず数秒の時間を必要とした。何故ならリミッターがかけられた《アミュスフィア》では、これほどの悲鳴を発するほどの苦痛は与えられないはず、とまで考えたところで。
「ぁは」
――状況を面白そうに見守るリーベと目が合うとともに、彼女の考えがこちらに伝わってきた。デジタルドラッグはプレイヤーを強くするものではなく……と思考が脳内で巡りながら、日本刀《銀ノ月》をサラマンダーの首もとから引き抜くものの、もはや既に時期を逸してしまっていて。
「うわぁぁぁ! ぁぁぁぁぁ!」
俺の足下にいたサラマンダーは、苦痛の叫びとともにポリゴン片と化した。その苦痛の正体は、十中八九あの『ペイン・アブソーバー』というシステムだ。かつて《ALO》において須郷が仕掛けていた、VRでのダメージを現実での苦痛として再現するシステム。出所や手段は分からないが、恐らくはあのデジタルドラッグに、同様のシステムが仕込まれているのだろう。
ならば、どうしてそのような不利益しかないシステムを、リーベはデジタルドラッグに搭載したのか。その答えは――
「ッ……うっ――」
「ショウキ! ちょっと……どうしたのよ!?」
――唐突な吐き気が俺の脳内に襲いかかると、日本刀《銀ノ月》を浮島の大地に突き刺してもたれかかることで、なんとか倒れることだけは免れる。隣に立っていたリズがこちらを心配してくれているようだが、脳で暴れまわる頭痛と吐き気に何を言ってくれているかまでは分からず、力を振り絞ってリズの背後を指差した。
「らぁぁっ!」
そこに迫ってきていたのは、日本刀《銀ノ月》の刀身の弾丸を避雷針にした雷撃を受け続け、瀕死になっていた筈のダガー持ちのスプリガン。
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