掛罠
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ハァァッ!」
「ッ……チィッ!」
そして仲間意識などないような連中だとはいえ、背後からの悲鳴に気をとられない筈もなく。シルフが背後を確認した隙に高速移動術《縮地》で接近し、日本刀《銀ノ月》で上段から切り裂くべく振りかぶるが、シルフはその反応速度を活かして既に回避行動を取っていて。勝利に確信した笑みを浮かべながら、カウンターのように雷撃を纏ったワンドを俺の腹に構えて。
「はっ……が!?」
次の瞬間、シルフは腹に前蹴りが炸裂して、勝利の笑みを浮かべた表情を歪ませながら吹き飛んだ。上段にわざとらしく振りかぶったのはフェイントであり、それと同時に放たれた本命の下段蹴りが狙い通りに炸裂した結果、相手からは思いもよらぬところからの衝撃が加えられたらしく。生命線だろうワンドを取り落としながら、ゴロゴロと転がっていくシルフを見つつ。フェイントが効くようなら、いくら『デジタルドラッグ』とやらで反応速度が人間離れしていても、それだけならばいくらでもやりようはあると。
そう思いつつ空中へ投げ出されたワンドを掴んて敵に構えれば、伴っていた雷撃が暴発するかのように発射された。あるいはあのシルフからの最後の抵抗だったやもしれないが、その雷撃は刀身が深々と突き刺さったスプリガンへと放たれていく。度重なる雷属性の攻撃を受けたために身体の自由を失ったのか、スプリガンは身体を痺れさせて倒れ伏した。
「リズ! シノン!」
そうしてシルフから奪ったワンドを斬り裂き武器破壊をすると、ひとまずは三人の動きを止めたと、リズたちの方を確認してみれば。どうやら二対二の戦いになっているようだが、シノンの援護射撃とリズの一撃の重さに敵は攻めあぐねているらしく、リズたちも敵もお互いに大した傷は見られなかった。
ならば、と。俺がやるべきことは、その膠着状態をこちら側を有利にするため、とうにかして介入する他ない。ひとまず専用ポケットからクナイを取り出すと、大剣持ちのサラマンダーへと風魔法を伴った勢いで投げ放った。
「っ!」
死角から放ったにもかかわらず、サラマンダーはこちらを見もせずに背面に構えた大剣でクナイを弾いてみせ、そのままの勢いでリズに振り抜く算段だったようだが。敵の前で武器を背面に向ける、などといった隙をリズが見逃す訳もなく、サラマンダーの腕を掴んで大剣が振れないほどに接近すると。
「これでフラッフラ逃げられないわよ……ねっ!」
一撃の威力だけならば、エギルと並んで俺たちの中でも最も高いリズの攻撃が、サラマンダーの深紅の鎧の上から盛大に打ち付けられる。それでも重装甲のサラマンダーには通用しないはずだったが、リズが装甲の薄い箇所を狙った結果として、サラマンダーに一時撤退を決心させるほどの威力を持っていて。
「せやっ!」
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