掛罠
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して。ひとまずは自身を囮にするように、もっとも包囲が厚いところへと向かっていく。
「なんで襲ってくる!」
そうして俺の正面に立った槍を構えたサラマンダーに問いかけるが、やはり先のリズからの時と同様に答える気はないらしく、すぐさま待ち構える体勢で槍をこちらに向ける。まるで血を吸ったように真紅の槍に隠れるように、側面からさらに二人のプレイヤーが迫っていることを横目にしながら、俺はコートの内側に縫い付けた専用ポケットへと手を入れる。
敵プレイヤーたちの表情からは、自らの強さに完膚なきまでの自信がある笑みを浮かべていて、それは例の『デジタルドラッグ』に起因するものの可能性がある。あの踊り子の言葉をどこまで信じていいかは分からないか、本当にリーベがデジタルドラッグの『密売人』だったのならば、こうしてリーベの味方をする彼らが『服用者』である可能性は高い。その効力は、シノンが忌々しげに反応速度や伝達速度が違うと語るほどで、単純な正面からの攻撃は届くまい。
ならば、と。ポケットから取り出したのは、日本刀《銀ノ月》の柄に装填することで、刀身に属性を与える専用のアタッチメント。本来なら土属性を付与するとともに、周囲に土煙を展開して相手の目を奪うアタッチメントを装填したいところだが、それではシノンやリズまでもが巻き込まれてしまう可能性がある。素早く別のアタッチメントを柄に装填すると、槍を構えたサラマンダーに肉薄する。
「ゥオラ――」
相手も気合い一閃、こちらを近づかせまいと槍を振り抜くが、抜き放たれた日本刀《銀ノ月》から、瞳を焼き尽くすかのような光が放たれた。それを直接的に見てしまったサラマンダーは、まるで望遠鏡で太陽を見たかのごとく、視力を失い槍で攻撃するどころではなく。
「セイッ!」
装填したアタッチメントは光属性を付与する《閃光》。鞘の中からその光量を解き放つことで目眩ましとし、さらに光速を付与された抜刀術の一撃がサラマンダーに吸い込まれ――
――ることはなく。瞳を失って見えないはずの一撃は、サラマンダーの槍による適格なパリィによって弾かれ、こちらが多大な隙を晒すだけに終わっていた。
偶然ではない。あのサラマンダーは瞳が効かない無音の闇の中で、こちらの抜刀術の軌道を読み適格に防いでみせたのだ。気配か、音か、見ていたところからの予想か。いずれにせよ、一撃必殺を狙った技は、なんてこともなく防がれてしまって。
「な――」
「ハァァッ!」
にわかに信じられない出来事に硬直した身体は、さらに側面から迫っていたダガー持ちのスプリガンの攻撃に反応することすら出来なかった。左の肩口を大きく切り裂かれてしまうが、利き腕ではないことが不幸中の幸いとして、右腕で日本刀《銀ノ月》をそのスプリガンに振るった
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